出版社内容情報
流れるような文章の向こうに、人間とは、人生とは、文明とは……と問いかける作家の眼がある。時代を見すえる明晰・公平な史観と、ヒューマンな精神が生んだ数多くのエッセイから、改めて今日を問う作品63編を収録。
作家・大佛次郎の生誕百年を記念する3冊のエッセイ・シリーズの、これはその第2冊めになります。 この巻では「人間と文明を考える」というテーマのもとに、63編のエッセイを選びました。巻頭の「水の音」という1編に象徴されるように、私たちの身のまわりから小鳥や虫や水の音が、いつからか遠いものになってしまっている現状に思いをめぐらし、人間が失ったものを考える、そのような内容のエッセイを集めた部分。 もう一つは、戦前・戦中・戦後を通し、時代の状況のなかで誠実に生きぬいた市民としての証言となる内容のもの。ナチスの焚書に抗議した「時代に光あれ」や、敗戦時の新聞に発表された「英霊に詫びる」などの歴史的な文章。 さらには、好きな美術や画家について語ったもの、脚本も書いている舞台演劇にまつわるエッセイなど、大佛次郎の多彩な感性をうかがわせる作品も収録しました。「破壊される自然」「日本の松の木」などという作品は、今日の問題をいち早く予見したものであり、静かな怒りを底にたたえた文章です。これがもとになって古都保存法が成立し、鎌倉の緑を守ったエピソードはよく知られています。
大佛次郎エッセイ・セレクション2
内容説明
自然へのやさしいまなざし、時代を誠実に生きた市民としての証言…選びぬかれたエッセイ63編。
目次
第1章 水の音―人間の都会
第2章 水上の光―イマージュの領土
第3章 話し方の時間―言葉の領土
第4章 時代に光あれ―時代とともに