出版社内容情報
好色一代男・好色五人女・好色一代女。初期代表作を三段組・全挿絵入で
"好色"の語が災いしたか、近代小説の祖とまで内外ともに評価の高い「好色一代男」をのせた教科書にはお目にかかったことがありません。「なんだ、ポルノか」くらいの軽い印象で素通りする読者が大多数だとしたら、ゆゆしきことと言わねばなりません。 好色(色好み)こそ、民族の元気、ひいては文化を支える営みである、とは、巻頭の古典への招待で暉峻康隆先生が力説されるところですが、この際、やや疲れ気味のあなたに是非おすすめしたい提言です。 桜もちるに嘆き、月はかぎりありて入佐山…… 冒頭からいきなり好物の桜餅が出たと勘違いした女子大生がいたそうですが、中沢新一氏が"横っとび"といわれるほど連想が自在で省略の多い独特の文体に素手で立ち向かうのは、土台、無理。 桜もすぐ散ってしまって嘆きの種だし、月も限りがあって山の端にはいってしまう。 下段の現代語訳へと眼を上下させるだけで、魅力溢れる歯切れのよい文体とともに確実に西鶴のメッセージはあなたに届くわけです。本全集ならではの強味と申せましょう。 自然美よりも人間的な愛欲こそという、反中世的な人間主義宣言。 この鑑賞注によって、「好色一代男」こそ元禄ルネッサンスの高らかなファンファーレであったことがよくご理解いただけると確信します。好色五人女、好色一代女とも。
暉峻 康隆[テルオカ ヤスタカ]
著・文・その他
東 明雅[ヒガシ アキマサ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
27
『好色五人女』を読了。以前読んだ近松の文章はリズミカルで流れるようだったが、こちらは一つ一つの文が長く、立て板に水とはいかない。だが、見事に削ぎ落とされた簡潔で引き締まった文章は、芭蕉に通じるものがあるように感じた。素人考えだが、俳諧という共通の基盤があるからだろうか。内容的にはまさに元祖「肉食女子」で、男尊女卑の時代なのに完全に男が振り回されているのがなんとも(^_^;) 五人の中では純情、一途でありながら最後まで毅然としていた八百屋お七が、最も好みだった。2018/04/24
元気伊勢子
5
「好色一代男」は、3回目。「好色五代女」、「好色一代女」は初めて。井原西鶴は、すごく面白い。江戸時代は、今のように恋愛が自由にできる時代ではなかったからこそ、純粋だったのかもしれない。いつの世も生きることは、ままならないことだらけのようだ。また読むつもりである。2022/04/06
diet8
0
面白かった。現代語訳を読んでから原文を読んだ。音読すると気持ちの良い文章。まだ黙読して楽しむということを前提にして書いてないんだなと思った。出版を前提として書いてあるという意味では現代的。妖術など非現実的なことはほぼ無くて、誇張はあれどリアル。性はおおらか。五人女では、処女が好きな男の寝床へ忍び込む。妊娠しても子捨てが違法でも不道徳でもなく出来たからか。一代男では、主人公が子を捨てる。一代女では、当時の女の職業ガイド。一代女は少し暗いが、売れない娼婦の悲哀であって、売春自体には罪の意識はない。2016/08/30