内容説明
九月のある日、その男は新しいキャデラックに乗ってサンフランシスコへ向っていた。男の名はロック・ワグラム。アルメニア系の俳優だ。三十三歳になった今、ロックはどうしようもなく孤独で死んでしまいそうな気がしていた。死の怯えを振り払い、好きな女と結婚し、軍隊に入ろうと故郷へ向かっているのだ。人生と孤独と愛、そして家族の絆をハート・ウォーミングに描いた長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いちろく
26
課題本。アルメニア系アメリカ人俳優ロック・ワグラムの人生のある期間を切り取ったような小説。初読時は、終始ロードムービーを眺めている様な感覚に襲われて、呆然としたのが本音。再読時以降は、アルメニア人種やアメリカ移民に関する方向性から切り込んでいくと、私なりにだが読み進められたのが落とし所。他の方の意見を伺う中で描かれていない内容の多さを知り驚く。集団と孤独の対比を意識させられる作品でもあった。2022/09/24
秋 眉雄
18
アメリカ生まれのアルメリア人俳優・ロックワグラムの物語。第一章は1942年までの経緯を三つの時系列で語り、第二章は1942年の話、第三章はその八年後の話。カリフォルニアをひたすら目指す所だけでなく、車に乗るシーンが、というか運転するシーンがやたらと多いです。少年時代の仕事、妹を神父を雇い主やその息子を送り迎えするシーン。車が家族の、もっといえばそれらを含む人生そのものの象徴になっているのかな。車色が灰色から黄緑色に塗り変えられたりもする所にも、それらをコントロールするのは自分だという意思を感じました。2019/04/13
星落秋風五丈原
12
内藤誠訳。主人公のロックはアメリカ大陸を車で疾走する。家族を思い、人生を考える彼。随所に顔を出す「男は…」で始まる奇妙なフレーズ。ヴェンダースのロードムービーのような作品。1990/07/14
1039kuri
2
全ての男は悪い世界の善人だ、みたいな最初の1文から、その独特の語り口に夢中になりました。地味だけれど、サローヤンの中でもっと評価されて欲しい作品です。
meg
1
面白い。本当に。 人間の奥底をみせてくる、サローヤン。2022/10/23