内容説明
俳句は十七音からなる、地球上でもっとも短い定型詩である。そのうち何字かは季語を含むのだから、作者が独創を発揮する余地はさらに少ないように見える。だが、それだからこそ、ひとつひとつの言葉は磨かれ、詠む人の感覚や記憶が凝縮されるのだ。本書では、俳壇の気鋭として知られる著者の「俳句的生活」をたどり、実感溢れる俳句作りの場に立ち会う。日々の暮らしを結晶化した、美しい日本語に再会しよう。
目次
第1章 切る
第2章 生かす
第3章 取り合わせ
第4章 面影
第5章 捨てる
第6章 庵
第7章 時間
第8章 習う
第9章 友
第10章 俳
第11章 平気
第12章 老い
著者等紹介
長谷川櫂[ハセガワカイ]
1954年(昭和29年)、熊本県に生まれる。東京大学法学部卒業。読売新聞社勤務ののち創作活動に専念。現在、俳句結社誌『古志』主宰、朝日俳壇選者。著書に『俳句の宇宙』(花神社、サントリー学芸賞受賞)、『虚空』(花神社、読売文学賞・中村草田男賞受賞)など
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感想・レビュー
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まさむ♪ね
44
俳句はやっぱり肩の力を抜いて気楽に愉しむのがわたしの性に合っている。とはいえ、その道を極めようとする著者の熱く揺るぎない俳人としての矜持は、直感でなんとなく良いなあくらいにしか思っていなかった浅いわたしにまったく未知の、深淵なる十七音の大宇宙を見せてくれる。そして、なによりも素晴らしいのが著者のほとばしる谷崎愛。大阪転勤のおり、芦屋にある谷崎潤一郎記念館に毎週のように通い、受付で文庫本を買っては読み買っては読みしていたというなんとも羨ましいエピソードほか、俳句に絡めて何度も登場。谷崎が読みたくなりました。2016/05/05
たかこ
27
たった17文字で表現するもの、それが俳句。「古池に蛙は飛びこんだか」に続き2冊め。俳句をサラサラっと読んで、自分なりに解釈してわかったつもりになるけれど、著者の解説と考察がとても面白い。俳句の文字の中に、日本の文学、日本文化が詰め込まれていて改めて日本の文化が好き、と感じることができた。谷崎潤一郎の細雪が読みたくなり、国際子ども図書館の建物が見たくなり、風姿花伝も読みたい、と気持ちが高まる。俳句から広がる世界の広さに驚いた。日本文化を知る新しい扉が開いた感じ!2022/06/01
よしひろ
10
無駄を一切切り落とし、この世の一切のものからインスピレーションを得て、17文字にまとめる。食べ物、建物、風景、さまざまなものが創造力をかきたて、そこから短い歌となる。何かに頼りながら、それに縛られない心が大切な気がした。2015/08/21
雛
9
先日亡くなった母が大好きだった本、本棚から頂いてきた。櫂さんに言葉を足してもらうと、芭蕉の句が思いがけない鮮やかさで迫って来る。やっぱり俳句凄いな。2015/11/01
ヤギ郎
8
歌人として活躍する著者が、俳句にまつわることを広く語る。俳句を読むための本というよりは、俳句を感じるための参考情報やきっかけが書かれている。2023/04/09