内容説明
たいていの研究者によれば、歴史上の重要な出来事は「起こるべくして起こった」のだという。また「歴史は繰り返す」、「100年に1度起こる」という周期論を繰り広げる者もいる。だが本当に歴史に必然性があるなら、物理科学的な手法を用いて、歴史の大変動をより正確に予測することは可能だろうか?歴史の方程式を探す鍵は、自然界に遍在する「冪乗則」にあった。事象の規模と頻度の関係がフラクタル構造をもつというこの不思議な規則性は、地震の発生や山火事の延焼などの多くの自然現象に見られるだけでなく、なぜ恐竜は滅んだのかといった問いにも大きなヒントを与えてくれる。また、冪乗則は、景気循環や都市の発展など、人間の意志が介在する事象のなかにも観察することができる。これを戦争の勃発、科学上の大発見など、もっと複雑な状況に応用するとき、私たちはこの世界の構造について深い洞察を得ることができるのだ。複雑系科学の方法で、歴史という人為の集積を読み解く―読者とともにそんな知的探求を楽しみながら、その過程にある科学的な考え方をわかりやすく解説するポピュラー・サイエンス。
目次
第一の原因
地震ゲーム
滑稽な論理
歴史の偶然
運命の分かれ道
磁石論
臨界的思考
殺戮の時
生命のネットワーク
ワイルド・アット・ハート
意思に逆らう
学問の地震
数の問題
歴史の問題
非科学的なあとがき
著者等紹介
ブキャナン,マーク[ブキャナン,マーク][Buchanan,Mark]
サイエンス・ライター。1993年に米国ヴァージニア大学で理論物理学の博士号を取得後、数年間を非線形力学とカオス理論の研究に費やす。その後、ロンドンに移住し、権威あるサイエンス雑誌『ネイチャー』の編集に参加。また『ニュー・サイエンティスト』誌の特集記事担当の編集者も務めた。現在は仏ノルマンディー地方の小さな村に移り、愛妻と愛犬とともに暮らしている
水谷淳[ミズタニジュン]
翻訳家。1970年横浜市生まれ。1993年に東京大学理学部を卒業後、1998年には同大学で博士号(理学)を取得。早稲田大学、東京大学の助手を経て、現在は産業技術総合研究所で研究員を務めるかたわら、科学書全般の翻訳を手がける
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