- ホーム
- > 和書
- > 文芸
- > 海外文学
- > その他ヨーロッパ文学
内容説明
月曜日の朝、僕の家のテラスにベジーシェクが降ってきた…。滑稽で奇妙、ちょっぴり悲しい7つの自伝的短篇集。クンデラをして「世界で最も多く翻訳されたチェコの作家」と言わしめた巨匠クリーマの大ベスト・セラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
30
井坂幸太郎氏の『重力ピエロ』の「春が屋根から落ちてきた」を彷彿とさせる、「月曜日の朝、僕の家のテラスにベジーシェクが降ってきた」という一文で始まる淋しくて温かい『ペテン師物語』が好き。2013/11/20
Nobuko Hashimoto
26
次々本を読む演習で取り上げる学生さんが現れたので再読。ずいぶん昔に読んで面白かった印象はあったものの内容はすっかり忘れていた。社会主義体制下、職を追われ、資格などがいらない仕事にしか従事できなくなった作家の実体験を反映した短編小説。深刻過ぎず、ユーモアとエロティシズムとペーソスの効いた、ああチェコ…な雰囲気。地下出版しかできなかったクリーマの本が民主化後、発行されたときには、サイン会に長蛇の列が出来たそう。それほどの人気作家なのだが、邦訳がほとんどないのが残念。2024/01/14
sabosashi
15
チェコというくにの、体制に順応しないことにはどうにもならないところで、いったん睨まれてしまうとどういうことになるか。 でも体制に闇雲に逆らったところで、さらに痛い目にあうだけ。 政治うんぬん以前に、ひととして生きていくこと、生きているあいだはせめてすこしでもいい思いもしたい。 もちろん逆らって生きることも選択のひとつであるはず。 でもだれもが強く生きられるわけではない。 ということで、チェコでのさまざまな生き方が示される。 逆らって生きるということは、美的であるかもしれない。 2019/12/16
umeko
11
金曜日が素敵。笑い事では済まされない不条理な世の中を滑稽に描いている、現実と物語世界とのギャップに切なさを感じた。2013/03/26
きりぱい
11
ペテン師の絨毯の顛末に笑ったり、エキセントリックに陽気な話でありながら、実は厳しい背景のもとに描かれている。プラハの春崩壊後、発禁作家となっても亡命せずに留まり、その時の体験がモデルともなっているのだ。抑圧に屈するようでいて、したたかに立ち回る人々を皮肉でもって描くところがユーモラスでもあり、やりきれなさがのぞくところでもあり。火曜と水曜の話もいいけれど、金曜の、妻に許しを請いたくなる挿話が印象的。クンデラいわく「世界で最も多く翻訳されているチェコの作家」だそうなのに、和訳はこれ1冊だけとは。2012/09/26