内容説明
自然を神の高みに置くかと思えば、無謀な自然破壊を平気でやってのける日本人。この自己矛盾をささえている日本の風土とはいったい何だろうか?和辻哲郎『風土』をその方法において乗り越え、新たな〈自然〉概念を提唱する本書は、卓抜の哲学的思考の書物であると同時に、最高級の日本論である。
目次
出発点―あいまいな場所、ある日曜日
1 基本要素の生気(気象;山水;草木)
2 風土の理(野生の自然、構築された自然)
3 現実の構築(自然の現われ出る裂け目;住まう;景化する;もうひとつの自然、もうひとつの存在)
帰還
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井蛙
1
自然そのものに意味はないが、それは人間にとって意味を持つ(意味sensには方向という意味もある)。このように人間-自然の間にコミュニケーションの場が成立している。これが風土milieu(つまり間の場)である。風土的次元では通態trajetと呼ばれる現象が起きている。これは主体/客体、文化/自然、個人/集団といった二元論的境界を横断してゆく運動だ。この通態によって自然(客体)は人間(主体)にとって主体として現れる。後にベルクはこれを環境倫理の基礎と考えるのだが、問題はこの風土的コミュニケーションの限界だ。2018/03/14
Yoshi
0
風土、milleuという概念の話。 ハイデガー的な存在論ぽくもあり、ハイデガーの存在よりはより場について比重を置いた話、その関係性を自然と掛け合わせてより日本的な存在と場についての話を繰り広げている。 和辻の風土をまだ読んでいないのであれだが、自然(場)の無意味さに意味を見出す(存在)といった大筋の話と、日本の里山、自然へ還る事への捉え方の違いなど読んでいて興味深い内容だった。2022/03/03
鴨長石
0
和辻哲郎の「風土」という概念をフランス語の「milieu」(間の場所)と訳し、それに呼応するように三部構成の本書の第二部に風土の理論をもってくるという仕掛けに解説を読んで気づき、鳥肌が立った。その第二部はベルクによる造語も駆使した難解なものだが、和辻を始めとした日本の思想家が直感に頼ってきた部分に対する意欲的な理論構築となっており、西洋的な論理の力を思い知った。反面、具体的な言及にはピンとこないものも多かったが、日本語における主語の曖昧さが日本の風土と連関があるという着想は直感的にも優れていると感じた。2020/07/23