ちくま学芸文庫
書物の近代―メディアの文学史

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  • サイズ 文庫判/ページ数 324p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480085276
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0195

内容説明

書物は言葉を盛る器であり、同時にまたその形態によって思想をあらわしてもいた。造本に心をくだき「大凝りの美本」に固執した夏目漱石、斬新なテクノロジーを駆使して素朴さそのものを書物のうえに演出してみせた島崎藤村、厳しい言論統制の下で書物の生産・流通の仕組みを見つめ、本と人との「生きた関係」を空想した中野重治ら…。出版文化を根幹にすえた近代という時代にあって、書物と人はいかなる変容をとげたのか。活字印刷の始まった明治から戦後にいたる小説の「モノ」としての基盤と、そこに意識的だった作家たちの格闘をたどる、日本近代文学史・文化史への新しい視座。

目次

第1章 小説の始まり、書物ブックの誕生
第2章 意匠のイデオロギー
第3章 書斎の空間、書物の宇宙
第4章 書物のリアリズム
第5章 侵入する肖像写真
第6章 活字の氾濫、メディアの闘争
第7章 書物の知恵の環
第8章 紙の戦争

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ハチアカデミー

12
近代文学と書物という形式をめぐる考察。地の文と絵が絡み合う読本から、文字だけの書籍への変化とその影響から始まり、漱石、藤村、徳永直に中野重治ら近代の作家たちが装丁や本文に仕組んだ意匠を解き明かす。個人的には藤村の『破壊』が自費出版であったというくだりを面白く読んだ。作家自らが本作りに関わることができる、というプラスの意味で自費出版を見るのは面白い。これは現代において、より自由になっている。読まれる為ではなく、己の為の本造りのためのヒントが多い。文学ネタが散りばめられ、面白く読んだ。2012/09/25

あなた

8
近代は、書物態(メディア)の時代だった。百閒は、10年かけた自分の短篇集『冥途』のノンブルをとっぱらい、目次配列もぐちゃぐちゃにし、多くの乱丁本を刊行することでメディア自体を幻想化した。太宰は処女作『晩年』をプルーストの装丁を志向しながら、想像力の豊穣と不毛の「白」をベースにペーパーナイフで切り裂く=拓くフランス綴じを選ぶことにより、太宰への愛ある身体的共振=強震をともなう読書行為を強要した。メディアは、メッセージである(マクルハーン)2009/08/28

じめる

2
読書という行為が透明なテクストを相手にしていると盲目的に信じられることが多いが、しかし紙媒体での読書読書というものはあくまで紙で作られた立方体を切り開いていく身体的行為であった。作家たちは近代に大きく変革を遂げた出版流通―印刷を前にして様々な意匠を凝らし、「書物」そのものと向き合うことを余儀なくされる。書物というものが看過できないものとなったとき書物論を内包する書物が生まれてくるが、そもそもそれは書物というモノへようやく与えられるべき視線が与えられたに過ぎないのだと思う。2014/07/12

ああああ

1
結社をつくり、雑誌を発行するというメディア的実践は、たんに自身の言説の公表という目的を越えて、同時代のさまざまな言説と一線を画して自分たちの言説の生産―享受のサーキュレイションをつくりだすことを意味する。他といったん切断されたその新たな解釈共同体づくりが共同体としての威力を発揮するにつれ、社会一般の言説コードへの浸透がはかられるのだ。福沢諭吉や森有礼ら明六社の『明六雑誌』(明7・3~8・11)が啓蒙家たちによる解釈共同体を誇示し、演説会などを通してその共同体を拡大したことなどは、482023/06/09

iwasabi47

1
書楼弔堂や大塚ミュシャ本を読んで物としての「本」を知るために。当たり前だが、メディウムは人の生活を変化させるな。佐々木喜善が自分が訛り語りで話した「遠野物語」が洋装の本になって感動したというのも理解できる。2019/09/07

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