内容説明
現代フランスを代表する哲学者ジャック・デリダが、みずからの生涯を生き生きと辿り直し、フッサール、ハイデガー、レヴィナスなどに言及しつつ、現代の枢要なテーマについて縦横無尽に肉声で語る。政治における嘘をどのように考えたらよいのか。赦すことのできないものがあるときにしか赦しを考えることができないのはなぜか。他者に対する絶対的責任性とは、無条件的な歓待とはどのようなものか。正義は法律と切り離すことができないのか。デリダ思想の現在の到達点を示すとともに、デリダ自身によるデリダ哲学への最良の入門書。本邦初訳。
目次
肉声で
歓待について
現象学について
政治における虚言について
マルクス主義について―ダニエル・ベンサイードとの対話
正義と赦し
著者等紹介
林好雄[ハヤシヨシオ]
1952年生まれ。東京大学仏文科卒業。駿河台大学助教授
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感想・レビュー
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Ecriture
16
デリダへの入門書と言われる本書だけあって、分かり易いのは確か。それだけに薄味なのも確か。ただ、ここでしか言われていないこともあるので、デリダをかなり読んできた人が振り返ると入門書に留まらないものになる。例えば「歓待」については、『歓待について』よりも真に迫った話をしており、外から移民を受け入れてあげるなどという平穏な意味ではないことがわかる。「忘却」についても『火、ここになき灰』を変形させて、「赦し」との関係の中で論じられる。2012/06/06
ラウリスタ~
13
デリダの対話、インタビュー集。デリダにしては、読みやすい。幼少期からの自伝的内容も含まれている。アルジェリアで第二次大戦中に育ったユダヤ人の少年としての生い立ちが少なからぬ影響を彼の生涯に与えているようだ。いろいろな著作に対しての言及がなされるので、それらの立ち位置を整理する事が出来る。しかし、デリダを読むってのは、どこまでが新しい内容なのか全然分からない。デリダを読むうちに、デリダ的に思考するってことを徐々に血肉化していくと、肯定的にとらえておく。2013/10/14
NICK
12
『ポジシオン』が初期デリダの理論的著作(といってもデリダにとっては理論的に見えるものも実は脱構築の「実践」であるのだが)を巡る対話篇だとしたらこちらは哲学のみならず法や倫理といった後期デリダの思想が中心の対話篇。『法の力』や『マルクスの亡霊たち』などでのデリダの企てが端的に明らかにされており、(後期)デリダを読むときに隣に置いておけば羅針盤となってくれるだろう。脱構築は極めて慎重な営為ではないか。アメリカでは文学理論として脱構築「理論」が流行したそうだが、その実、党派性に依らないような政治的実践であるのだ2014/06/30
白義
9
デリダのラジオインタビュー集だけあって、赦しや歓待などテーマに関するデリダの思想が、素直で率直な語り口で語られてはいますが一つ一つが短いので入り込む前に終わっちゃう感じかも?初心者でも入門書常備じゃないと難しいし、中級者以降が手堅く振り返るのが一番いいかもしれません。マルクスと現象学への立ち位置や自伝的側面はわりとビギナーでも普通に読めますが、虚言分析はちょっときついかもしれませんね。歓待、赦しに関してはデリダの倫理学真骨頂です。ここから主著にいっちゃいましょう2011/05/21
★★★★★
4
実は私も初デリダ。1990年代の後半に行われた、デリダに対するラジオインタビュー集です。もしも「赦し」が存在するなら、それは「まさに赦すことのできないでいるものに対して差し向けられねばならない」(P202) ね。又聞きで知っていた彼の考えが、自身の口からわかりやすく(?)述べられていて参考になりました。私事ながら最近勉強不足を痛感することがあったもので、ちと腹くくってデリダ読んでいきます。2009/10/06