ちくま学芸文庫
異教的ルネサンス

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  • サイズ 文庫判/ページ数 324p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480088147
  • NDC分類 704
  • Cコード C0170

内容説明

世に言う「ヴァールブルク学派」の仕事の紹介は少なくないが、肝腎の名祖自信の著作は未知のままという奇妙な状況が続いた。個別科学の了見の狭さを「国境警察の偏見」と断じたその人を、既成の美術史や文化史の枠に押しとどめようとする倒錯も根強い。「アテナイはまさに繰り返し新たにアレクサンドリアから奪い返される必要がある」と語るヴァールブルクの思想空間の全体は、いまだ名づけられていない。この、ブルクハルトとニーチェの一族にしてフロイトとベンヤミンの同時代人、「血はユダヤ人、心はハンブルク人、魂はフィレンツェ人」の肉声に、今こそ耳を傾けよう。重要著作3篇、本邦初・新訳。

目次

イタリア美術とフェッラーラのスキファノイア宮における国際的占星術
ルター時代の言葉と図像に見る異教的=古代的予言(宗教改革、魔術、占星術;宗教改革時代の宇宙論的、政治的世界観の中の異教的=古代的要素:ルターおよびその周辺における占星術と奇形学;ルター時代におけるヘレニズム的応用宇宙論による予言とドイツ人文主義における古代の復活:東方における仲介および起源)
東方化する占星術

著者等紹介

ヴァールブルク,アビ[ヴァールブルク,アビ][Warburg,Aby]
1866‐1929年。ドイツの歴史家。ボン、シュトラスブルク、ベルリンの各大学に学ぶ。終生野にありつつ、膨大な文献蒐集と独自の学際的方法をもってなされた新しい文化科学創出の試みは、再評価の気運が高く、現在、新全集刊行中

進藤英樹[シンドウヒデキ]
1949年東京生まれ。慶応義塾大学大学院博士課程単位取得。帝京大学助教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

63
ルネサンスについての三つの講演を収録。ここで作者は「ルネサンスと言われる復活の過程の本質」を、ローマ帝国滅亡により喪失しアラブを通じて再び西洋に見いだされた、ヘレニズム=アラブ的、占星術的に変容した古典古代の相貌が「古代の著作家についての新たな知識によって」克服・再生される過程として示します。その「論理と魔術」という「互いに異質で矛盾し合う諸要素が」「ぶつかり合って」いた時代を通し作者が捉えてみせた、迷信や運命論と対峙する人間の姿は、ネット上に不確かな情報が溢れる現代にも古びないもののように思いました。2021/05/07

藤月はな(灯れ松明の火)

30
ローマ帝国滅亡によって今までのギリシャ哲学や占星術などの文化要素はヨーロッパから駆逐され、東方で独自に発展を遂げることとなる。そして文化面での「暗黒の中世ヨーロッパ」からルネサンスにおける古代ヨーロッパ文化を学び直すべく、東方から独自に発展してきた文化要素はヨーロッパで新たに見つめ直されることになる。各文化圏における十二子宮の特徴の比較、占星術とイタリア美術の表象など異国で発達したかつての文化の再融合の様子が分かり、面白かったです。図表、絵画も豊富ですが、できるならば大きなカラー版で見たかったです。2013/05/20

ラウリスタ~

12
異教的ルネサンスっていうから、イタリアルネサンス芸術で扱われる異教の神々についての本かと思ったら、全然違った。占星術が中心テーマ。ルターの生まれた年月日、時間の惑星の配置(ホロスコープでいいのかな)を巡る言説の数々。悪魔に仕立て上げるために、誕生「年」を一年ずらそうとまでするカトリック側の学者たち。ただ、かなり専門家向けに偏った文章のようにも思え、一般の読者にとっては多少読むのが疲れるかと思った。今では当然重要なものとして研究されているであろう占星術研究も、20世紀初めでは白眼視されていたのか。2013/11/04

roughfractus02

5
著作集タイトルでもある代表的論文「イタリア美術とフェッラーラのスキファノイア宮における国際的占星術」「ルター時代の言葉と図像に見る異教的・古代的予言」を収録した本書は、イタリアとドイツのルネサンス期の古代再生の様を図版資料を駆使して多元的に読む。『ムネモシュネ・アトラス』体験後に本書を繙くと、近代的印刷メディアによって3次元に格下げされた多次元世界を構築する著者の意図が感じられる。エジプトからギリシャ、アラビア圏を経てヨーロッパに広まる占星術は、キリスト教世界における異教に留まらない。それは異次元なのだ。2019/04/09

arte

2
「イタリア美術とフェッラーラのスキファノイア宮における国際的占星術」のみ読了。古代ギリシア文化が、ヘレニズムやアラブといった東方世界のフィルターを通過してルネサンス芸術に移植される過程について、文献・視覚資料を通じてダイナミックに展開。ヴァールブルクの論点を理解するには、あまりにも短い内容だが、講演としては刺激的だったに違いないと想像する。個人的にはヘレニズム時代における東西の文化交流に興味があるので、「占星術」が比較の対象になることがわかったことが良かった。2012/04/04

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