出版社内容情報
ある朝、目覚めるとセールスマンのザムザは一匹の虫に変身していた。なぜ虫に変身したのか、作者は何ひとつ説明しない。ひたすら冷静に、虫になった男とその家族の日常を描いてゆく。
【編集者よりひとこと】これまで何人もの訳者によって訳されてきた『変身』。池内紀訳は次のようにはじまる。「ある朝、グレーゴル・ザムザが不安な夢から目を覚ましたところ、ベッドのなかで、自分が途方もない虫に変わっているのに気がついた。甲羅のように固い背中を下にして横になっていた。」
内容説明
カフカの作品の中でも、ひときわ異彩を放つ『変身』をはじめ、生前発表の全作品を収録。
著者等紹介
池内紀[イケウチオサム]
1940生まれ。1965年東京大学大学院修了。ドイツ文学者
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
34
「判決」: ゲオルクと父との会話のすれ違いに、なんだか胸がザワザワする。 ある日、ゲオルクは、自分の結婚のことをペテルブルクにいる友人に伝えることにしたと父に報告する。 すると、父はそもそもお前にはペテルブルクに友人などいないだろうと彼を難詰し、はたまた自分がとっくに知らせておいたからすでに知っているなどと言う。/ 2023/05/09
かふ
24
カフカの生前に公に発表されて本の形になった作品や雑誌に掲載された短編集である。カフカの長編では、ブロートの手が加えられており(ブロートにより編集された)、純粋にカフカの作品と世に送り出されたのはこれらの短編だけなのである。『変身』は短編というより中編だが。 カフカの作品の特徴はズバリ「生成変化」。これは誰も言っている。特にドゥルーズのカフカ論はお勧めかも。やたら言葉が難しいがカフカやドゥルーズは勢いで読めばいいのです。立ち止まらないで振り返らないで一気に読むと快感が得られる。2022/01/15
パブロ
8
ざわざわざわざわ…。って『カイジ』じゃないですよ。おまけに『さとうきび畑』でもないんです。これはカフカの小説を読んだ後の胸騒ぎ。何だろう、この人を不安に陥れる感覚。さらに、「この現実世界は不安定なもんなんだよ」と囁かれているような不快感。カフカが生前に発表した作品のみを集めているこの巻。「観察」での意味深さ、「判決」の違和感と衝撃的な幕切れ、「変身」に底流する底抜けの明るさ……。「不条理」だけでは言い尽くせない物語の数々。一度読んだだけでは済まされない、これから何度も読み返すことになりそうだな〜、カフカ。2013/04/03
メルキド出版
7
「ある青春小説」文学バー「リズール」で酒に酔っぱらいながら読んだのでよく覚えていない。暗さとスタイリッシュな雰囲気は絶妙だったと思う。2022/06/04
Timothy
5
"Die Verwandlung"を読んだので答え合わせに手に取ったのだが、冒頭から仄暗いイメージだった「変身」が、カタカナのオノマトペの影響だろうか、だいぶコミカルな印象になっていて驚いた(前半部分)。他には「流刑地にて」と、「田舎医者」に含まれる「掟の門前」「ジャッカルとアラビア人」が面白かった。しかし短編(断片?)を読み慣れないせいなのか、これで終わり?と感じる作品も多く、全体としてはあまりピンと来なかった。2020/12/17