内容説明
網野善彦が照らし出した民衆世界のキーワード“偽文書”が読み解く新しい「歴史と民間伝承」の研究。単行本未収録の網野論文を掲載。
目次
第1部 偽文書への照射(偽文書をめぐって;系譜・伝承資科学の課題)
第2部 歴史学の中の偽文書(偽文書と中世史研究;「由来」「由緒」と偽文書;近世の偽文書―武田浪人を事例に;近世の神道・神社と偽文書)
第3部 民俗社会の中の偽文書(偽文書と民族―民俗書誌論再説;呪符・守札と偽文書;職人の由来書―『商人の巻物』に見る表象と民俗)
第4部 近代につくられた偽文書・偽書(近代の偽書―“超古代史”から「近代偽撰国史」へ)
資料編
著者等紹介
久野俊彦[ヒサノトシヒコ]
栃木県立栃木南高等学校教諭。民俗学・説話文学
時枝務[トキエダツトム]
東京国立博物館研究員。宗教考古学
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感想・レビュー
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akuragitatata
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偽文書研究は2000年代から急激に重要性をましてきたと思われる。それは一方で、かつて「本・文書」を大切にするという感性が失われていったこととも無縁ではないだろう。民俗学からの偽文書学は大変スリリングで常民の生活と信仰を活写するものではあるが、文書や芸道書の扱いについてはやや疑問が残るケースもある(口伝の解釈とか)。『宮下文献』に古今注や伊勢注との関係があるかもしれないことを解いているのは国文学者の失見と言わざるを得ない。中世は本当はこんな混沌とした学知と信仰のあいまいな世界だったのだろう。2017/07/30