感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
39
深見弾の友情出演作品。ストルガツキイ兄弟の問題作『滅びの都』を巡る体験を元にした名作のパロディ。十分に鑑賞するためにはパロディ元のブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』は必読。それ以外にも様々なソ連らしい周辺事情(日本に関しても)が織り込まれている。「<原稿は燃えない>なんてことをよくも信じさせようとしたもんだ。原稿は燃えるんだ。それも実際に青い炎をあげて燃えるんだ。いったいどれほどの原稿が世に現れずに朽ち果てていったことか…」「創造的な苦しみには報いはないのです…そのような苦しみはそれ自身が報償なのです」2017/01/14
かもめ通信
23
ストルガツキイを読むのはこれが2作目。以前読んだ『月曜日は土曜日に始まる』はとても面白かったし、この作品はブルガーゴフの『巨匠とマルガリータ』へのオマージュにもなっていると聞いたので、かなり期待して読み始めたのだが、これはもう期待以上の面白さだった!万人受けする…というよりは、好きな人にはたまらない…というタイプの作風だとは思うが、決めた!私はストルガツキイ兄弟を追いかけるぞ!と決意を固めさせられた1作だった。2016/07/06
いふに
3
昼は普通の人の仮面を被りつつ、日が暮れるとどこからともなくある場所に集まってくる人々がいる。日頃の鬱憤を晴らすがごとくに事件を起こし、奇想天外な発明品を生み出し、夢か現か幻かここはモスクワ妄想倶楽部!……的なのを勝手に想像していたんだけど全然違う話だった。細かい部分がいちいち面白い。終盤の怒涛の長ゼリフには読者にまでぐさぐさ来る。2016/01/10
lico
3
半自伝的な作品。伝記小説と言うには幻想的だが幻想小説と言うには現実的。作者の恐れが舞台のモスクワに幻想的な影を落としているのかもしれない。当時のソ連へを知っているか、作者の作品をどれだけ読んでいるかで作品から受ける印象がかなり変わりそう。ブルガーコフへのオマージュが激しい。直前に『巨匠とマルガリータ』を読んでいたのは正解だった。原稿が燃やされる以上に恐ろしい、恥ずべきことを作者の投影である主人公ではなくブルガーコフに語らせているところが印象的。2015/11/26
スターライト
2
1982年のモスクワを舞台にし作家を主人公にした本書は、訳者によって自伝的小説と捉えられていて、訳者による詳細な注釈がつけられているが、たしかにそれを読むとストルガツキイ(兄のアルカージイの方)の境遇と妙にクロスオーヴァーする感覚に襲われる。実在の作家が時に実名で、あるいは変名を使ってのほのめかしが随所に見られ、ストルガツキイの他作家に対する評価がわかって思わずニヤリとさせられる。特に『運命の卵』『巨匠とマルガリータ』で有名なブルガーコフへの敬意は際立つ。2010/03/19