出版社内容情報
国家と神話との結びつきを論じたカッシーラーの遺著。下巻では、マキャヴェリ後の政治思想を検討。啓蒙思想・ロマン主義を経て、英雄崇拝・人種主義・ヘーゲルの国家理論が登場、それらが路を拓いたファシズム国家では、技術が国家の神話化に動員される。著者の強烈な危機意識と理性への信頼は、現代にも通じる一つの指標。
目次
第2部 政治理論の歴史における神話との闘争(承前)(ストア主義の再生ルネサンスと国家にかんする「自然法」理論;啓蒙と、そのロマン主義的批判者たち)
第3部 二十世紀の神話(準備;カーライル;英雄崇拝から人種崇拝へ;ヘーゲル;現代の政治的神話の技術)
結論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
75
下巻では、人間が合理的思考を獲得したと思われた啓蒙の時代を経て、ロマン主義による神話の復権、カーライルの英雄崇拝、ゴビノーの人種崇拝、国家を「地上に現存する神の理念」とするヘーゲルの思想などを養分とし第一次大戦後のインフレと失業がはびこるワイマールで「二十世紀の神話」が誕生したこと、その現代の政治的神話の特徴などが語られます。この神話との闘争に対し哲学には、自らの時代に反して思考する知的・道徳的な勇気が必要で、それにより人間の生にあって果たすべき課題を充たす事ができるのだという作者の言葉が胸に残りました。2023/10/31
加納恭史
20
以前にジョゼフ・キャンベルの「神話の力」など読んでいたが、カッシーラーの神話の解釈は国家と結び付けて、本当に難しいな。キャンベルでも、様々な英雄神話が出ている。アレクサンダーから映画「スターウォーズ」まで、宇宙の英雄から王様や貴族の様々な英雄物語がある。またイエスや仏陀は文化英雄であるとも語る。2000年後でも道徳や倫理について他の追随を許さない。この本でも、カーライルに様々な英雄神話を展開させている。カーライルの英雄の分析は歴史的なもので、形而上学的な背景も十分に検討されている。英雄の歴史解釈は難しい。2023/06/25
春ドーナツ
13
カール・ポパーの「開かれた社会とその敵」との差異を足掛かりに読み進めていく。後日ヘーゲルの「法の哲学」を読んだときに、浅学なので、全体主義の萌芽を内包していたとは、そこまで感じられない。ホッブズの「リヴァイアサン」よりは普遍的だった感触がある。カッシーラーのヘーゲル批判もポパーよりは感情的にならず、公平な分析という風に認識した。法律と国家に関しては、ショーペンハウアーの著作が2、3ページで手短だけれど、鋭い指摘で深く共感した。本書の第三部は現在進行形を扱っているけれど、そのぶん射程が短くなるので、うんぬん2023/12/17
∃.狂茶党
10
神話の時代が終わろうとしていたはずだった。 未開社会において、神話や迷信が姿を表すのは、天候などの手に負えない事態に対してである。 日常生活は、至って科学的、機能的な手順で行われる。 生きていくことに無駄なことなど、人はしたがらないものである。 ユングが述べていたように、第一次世界大戦のあと、欧州では、神話が息を吹き返してくる。 人が神話に頼るのは、無力感であり、自由を捧げる行為だ。 これによって人は責任というものを殺してしまう。 今また世界はそのように傾いている。2022/09/14
Go Extreme
2
政治理論の歴史における神話との闘争(承前)。 ストア主義の再生ルネサンスと国家にかんする「自然法」理論 社会契約の理論 啓蒙と、そのロマン主義的批判者たち 二十世紀の神話: 準備 カーライル 英雄崇拝にかんするカーライルの講演 カーライルの理論の個人的な背景 カーライルの理論とその歴史観の形而上学的な背景 英雄崇拝から人種崇拝へ: ゴビノーの『人種不平等論』 ヘーゲル: 現代政治思想の発展に対するヘーゲル哲学の影響 ヘーゲルの政治理論の形而上学的背景 ヘーゲルの国家理論 現代の政治的神話の技術2021/10/19