出版社内容情報
『女工哀史』の著者細井和喜蔵(1897-1925)の妻高井としを(1902-83)の自伝。十歳で紡績女工になった著者は、労働運動を通じて和喜蔵に出会い、自らの体験を生きた資料として提供した。大正昭和の時代、貧しさのなか、ヤミ屋や日雇いで子を育てながら、福祉を求めて闘いつづけた生涯の貴重な記録。(解説=斎藤美奈子)
内容説明
『女工哀史』の著者細井和喜蔵(1897‐1925)の妻高井としを(1902‐83)の自伝。10歳で紡績女工になり、労働運動を通じて和喜蔵に出会い、事実上の共作者として夫の執筆を支えた。戦争を挟んだ貧しさのなか、ヤミ屋や日雇い労働で5人の子を育てながら、社会保障を求めて闘いつづけた生涯の貴重な記録。
目次
1 『女工哀史』日記(炭焼きの子;下宿住まいの小学生;妹も死んだ、弟も死んだ ほか)
2 ヤミ屋日記(一粒のあめ;地獄図;腹いっぱいたべさせたい ほか)
3 ニコヨン日記(日給百六十円;労働組合をつくろうよ;組合PRに映画見物 ほか)
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
85
是非、読んで欲しいオーラル・ヒストリー本。何故なら、『女工哀史』の共同執筆者であった女性の逞しき一生と歴史では埋もれがちな民の声を掬った稀有な一冊でもあるのだから。夫である細井和喜蔵の共同執筆者であったにも関わらず、改造社から「内縁の妻だから遺産は渡せません」と言われたり、一番、腹が立ちました。人々の暮らしのために戦い、時に警官などをどやしつけたとしをさん。今世を見ると彼女が成し遂げたことは道半ばかもしれない。でも健康保険や水道普及など、当たり前のようにある福祉が受けられるのは先人たちが必死に戦ったからだ2018/07/03
ごへいもち
36
「女工哀史」著者の妻の自伝。過酷な人生なのにすごいバイタリティ、なぜか明るさが感じられる。良い本だった。多くの人に読んでもらいたい。「女工哀史」と一緒に手にしたもののこちらのほうが読みやすくて「女工哀史」は挫折中。2019/01/27
はづき
20
『女工哀史』が描かれる舞台裏がわかるし、ひとりの女性の人生が描かれている。ひとりの人間として精神的にも経済的にも自立して生きた姿や、戦前・戦後の日本の貧しさや、生活の要求を実現していったたたかいがよくわかる。 女性としては、大いに励まされるけど、これが気に入らない方々もいるだろうな。 「紡績女工さんのなかで生きたい。ブルジョワやインテリには私の気持ちや目的は理解されなくても、女工さんならわかってくれる。だから仲間といっしょに、深夜業なくせ、肺病にならんようにうまい物食わせろ、といいたいのです」。2016/01/12
こぽぞう☆
19
「女工哀史」はずいぶん前に読んだ。中に、うろ覚えだが「自分はこの本を書いて、闘っているのだから、妻に寄生して当然」というようなことが書いてあって気になっていた。しかし、この本を読むと、細井和喜蔵は家事全般こなし、夭折しなければイクメンになったに違いないナイスガイだった。「女工哀史」はこの本の前半1/3に過ぎず、そこから再婚、戦中、戦後と話は続く。正規の教育は3ヶ月小学校に通っただけ、というのにこの知性!バイタリティ!スゴい!羨ましいのは彼女たちには理想があったこと。現代日本人は理想を見つけられない。2019/05/29
ともゆき
13
著者、すごいバイタリティ。一緒に腹を立てたり、悲しんだりしながら読み終えました。すごい人生です。2015/12/12