内容説明
日本の歴史の中でも室町時代の二百年ほど、混乱の極みを見せた時代はなかった。が、一方では、その「豊かな乱世」は生け花、茶の湯、連歌、水墨画、能・狂言、作庭など今日の日本文化の核をなす偉大な趣味が創造された時代でもあり、まさに日本のルネサンスというべき様相を呈していた。史上に際立つ輝かしい乱世を、足利尊氏や織田信長らの多彩な人物像を活写しつつ、独自の視点で鮮やかに照射する。
目次
沸騰するるつぼ
乱世を開いた二人の覇者
乱世を彩る脇役群像
奇妙な統治者
乱世が生んだ趣味の構造
一揆と下剋上
乱世の虚実
文化人たち
世界の中の日本
活気ある巨大な実験室
日本文化の底を流れるもの
著者等紹介
山崎正和[ヤマザキマサカズ]
1934・3・26~。劇作家、評論家。京都府生まれ。1961年、京都大学大学院美学美術史専攻博士課程修了。米国コロンビア大学客員教授を経て、76年、大阪大学教授、その後、東亜大学学長などを務め、現在、中央教育審議会会長、LCA大学院大学学長。著書に『世阿彌』(岸田戯曲賞)『鴎外 闘う家長』(読売文学賞)『病みあがりのアメリカ』(毎日出版文化賞)などがある。06年、文化功労者に顕彰される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fseigojp
16
やっぱり南北朝になってからは複雑怪奇2015/08/04
目黒乱
15
仏像がつくられた当時の姿をCGで再現。よくこんな企画がありますが、それは極彩色や金ぴかの派手派手で、まったくありがたみがありません。緑青をふいたり、半ば朽ちかけているようなもののほうがいいのです。この書を読んで、このセンスが村田珠光のいう「幽玄の美」にあてはまるのではないかと思いました。煌々たる満月よりも、雲がかかった月のほうがよいという幽玄。室町時代は、日本文化の半ば以上を創造した時代だそうです。自分の美的センスのルーツが室町時代にあるかもしれない。そんなルーツ探しの気持ちでこの書を読むのも一興です。2015/10/16
satoshi
6
室町時代っておもしろい。天皇家が存続の危機にさらされたり、将軍が暗殺されたり、積極的に海外貿易が行われたり、トピックはいろいろあるのに、現在はどこか平安・鎌倉と戦国・江戸の「谷間の時代」みたいな扱いをされているのはなぜなんだろう。こうなったのは戦後だろうか。2011/06/01
げんがっきそ
3
室町時代で能、生け花、茶の湯、連歌、水墨画、作庭など日本文化の核となる趣味が創造されたらしい。これらは「人との交渉の場、もてなしの空間、サロン」として始まった。足利将軍の武力が覚束なかったため、公家や天皇の力を巧みに取り込むことで、権力を「もてなしや芸術」によって維持しようとした外交的な時代。サロンは外交的であるはずだが、これらの日本文化は時を経るにしたがい、内的な方面へ洗練された。日本人は内的に抑制された精神に一目をおく性質があるため、たとえ内的であっても、外交的な機能を果たせたのではないか?2021/03/05
ふら〜
2
室町時代の文化興隆を中心に書き上げてる本。やはり著者の山崎氏は読みやすい文章書くなと改めて思った。ついでに言えば日本史の授業を思い出して懐かしい気持ちにもなったり。2015/01/18