講談社学術文庫*再発見日本の哲学<br> 再発見 日本の哲学 北一輝―国家と進化

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講談社学術文庫*再発見日本の哲学
再発見 日本の哲学 北一輝―国家と進化

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  • サイズ 文庫判/ページ数 333p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062923996
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0110

出版社内容情報

独自の社会主義論、進化論、そして国家論を展開した、二・二六事件の思想的指導者。「転回」したとされる思想の一貫した本質を照射!北一輝は昭和11年(1936)の二・二六事件の、蹶起将校たちの思想的指導者として知られる。すなわち、戦前の代表的な国家主義運動家・思想家とされる。
もちろん、そのとおりなのだが、彼は若い頃、独学で当時の国家論や社会主義論を学び、二三歳にして、主著『国家論及び純正社会主義』を自費出版した。ここで、普通選挙制度の導入と議会による社会主義革命を主張し、刊行直後に発禁処分になっている。
以来、在野の活動家・思想家として活動する。
そして、1911年、中国の革命を支援するため上海に渡る。これを機に、一転して、軍隊主導の暴力革命を唱えるようになる。
このような経緯から、これを左から右への「転回」と捉え、思想的な断絶を指摘するのが、従来の北一輝論であった。
本書では、この思想的断絶を認めない。
主著『国体論及び純正社会主義』では、「国家人格実在論」なるものが主張されている。北にとって、国家は、物理的に実在する法人格であり、それは、進化するべきものであった。つまり、国家論と進化論が接合されたところに、北の思想的本質があったのだ。
この国家が進化するという思想は、ある意味では、近代日本の根底を支えた思想でもある。
北一輝を読み直すことは、近代日本に通奏低音としてながれていた国家論の系譜を読み直すことでもあるのだ。
本書は、いわば、「近代日本」という国家論を考え直す試みでもある。

第一章 国体論批判と理想の国家
    「純正社会主義」の目指すもの/「神類」とは何者か
第二章 理想の国家とは何か
    進化論の意味するもの/実在する人格としての国家/北一輝とプラトン
第三章 北一輝と革命
    北一輝と戦後改革/平等はいかにして実現されるのか/絶対者をめぐって


嘉戸 一将[カド カズマサ]
著・文・その他

内容説明

北一輝は独学で国家論や社会主義論を学び、二三歳で主著『国体論及び純正社会主義』を自費出版するも発禁となる。国家主義としての社会主義という社会主義論を主張するが、その内実はマルクスではなくプラトンを起源としていた。生物が進化したように国家という人格もまた進化する―独自の構想による思想的営為を、近代日本思想史に位置づけた快著。

目次

第1章 国体論批判と理想の国家(国体論と北一輝;明治憲法体制をめぐって;「純正社会主義」の目指すもの;道徳と科学主義;「神類」とは何者か)
第2章 理想の国家とは何か(進化論の意味するもの;実在する人格としての国家;有機体としての国家と精神;北一輝とプラトン)
第3章 北一輝と革命(北一輝と戦後改革;北一輝における天皇;平等はいかにして実現されるのか;絶対者をめぐって)

著者等紹介

嘉戸一将[カドカズマサ]
1970年、大阪府生まれ。東京大学法学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程中退。現在、龍谷大学准教授。専攻は、法思想史、政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かんがく

15
私が近代日本思想に興味を持ったきっかけの人物。議会による社会主義革命を目指した『純正社会主義』時代の北から、軍事クーデタによる国家改造を目指した『日本改造法案大綱』時代の北への、彼の思想の転回を著述。プラトン、ニーチェ、スペンサー、孟子、美濃部達吉、田辺元など国内外の思想家との比較が中心に論が進むため、北の特異性がわかりやすい構成になっている。2019/08/30

無重力蜜柑

10
二・二六事件の理論的指導者で国家社会主義者という雑な認識しかなかったが、特異な思想内容に驚いた。そもそも右とか左とかで片付けられるものではない。科学と社会主義を掲げるもののマルクス主義とは全く関係がない。国家が十全な機能を発揮するための経済格差是正が目指され、「大我」と「小我」が一致した天才による共同体的哲人政治が理想とされる。根底にあるのは科学主義とプラトン主義で、民衆全体の「人類」から「神類」への進化という擬似生物学が極めて特異。最後には民衆の神類への進化に自分の哲人政治を先立せるようになる。2022/05/23

またの名

9
上級国民を「今日の大資本家といひ大地主といふ者は単一なる富豪にあらず国家の経済的源泉を私有して殺活与奪の自由あることに於て全き意義の大小名なり」と批判しつつ天皇中心の右翼国家観を唱えた思想の、伝記を排した内在的解説。マルクスを認めつつむしろプラトン流社会主義を称して人類が完全なる神類へと進化し生殖や排泄行為から解放されるビジョンは、象徴天皇の下の民主主義という現行憲法に近い憲法案すら提示。最期には北の口を借りて「霊」が語り信者達は遺骨を泣きながら食べたという人物の特異性が際立つも、類似の事例が頭に浮かぶ。2019/08/31

mittsko

8
北一輝の思想、とくにその国家論の研究。それを日本思想史、とくに同時代史のなかに位置づけ、「政治論・法論」すなわち憲政論、ひいてはルジャンドル流法論の視覚から整理する。いきおい、明治国家がひねり出していった国体論=天皇論とのするどい緊張関係が、議論の主軸になるとともに、信、準拠、神的起源、真理などの概念が掛け金になっている。一次資料をぐいぐい引きたおす、みっちりした記述で圧力がすごい。気楽には読めないが、とてもエキサイティングな本だと思いました。なお、儒教など中国思想について、筆者はやや決め手を欠くかな…2019/02/05

keint

7
令和200冊目の書籍。北一輝の国家観を進化(国民と天皇が結びついた有機体から神類への進化)という側面から分析している。前期(国体論及び純正社会主義)から後期(日本改造法案大綱)が左派から右派への転向でないことを改めて確認した。ただし、日蓮主義者としての北一輝の側面にはあまり注目していない(法華経信仰を自らを絶対化するためのものとしている)。しかし、巻末の読書案内等も非常に参考になったため、北一輝のことを知りたい人には良書である。2020/01/29

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