出版社内容情報
独自の社会主義論、進化論、そして国家論を展開した、二・二六事件の思想的指導者。「転回」したとされる思想の一貫した本質を照射!北一輝は昭和11年(1936)の二・二六事件の、蹶起将校たちの思想的指導者として知られる。すなわち、戦前の代表的な国家主義運動家・思想家とされる。
もちろん、そのとおりなのだが、彼は若い頃、独学で当時の国家論や社会主義論を学び、二三歳にして、主著『国家論及び純正社会主義』を自費出版した。ここで、普通選挙制度の導入と議会による社会主義革命を主張し、刊行直後に発禁処分になっている。
以来、在野の活動家・思想家として活動する。
そして、1911年、中国の革命を支援するため上海に渡る。これを機に、一転して、軍隊主導の暴力革命を唱えるようになる。
このような経緯から、これを左から右への「転回」と捉え、思想的な断絶を指摘するのが、従来の北一輝論であった。
本書では、この思想的断絶を認めない。
主著『国体論及び純正社会主義』では、「国家人格実在論」なるものが主張されている。北にとって、国家は、物理的に実在する法人格であり、それは、進化するべきものであった。つまり、国家論と進化論が接合されたところに、北の思想的本質があったのだ。
この国家が進化するという思想は、ある意味では、近代日本の根底を支えた思想でもある。
北一輝を読み直すことは、近代日本に通奏低音としてながれていた国家論の系譜を読み直すことでもあるのだ。
本書は、いわば、「近代日本」という国家論を考え直す試みでもある。
第一章 国体論批判と理想の国家
「純正社会主義」の目指すもの/「神類」とは何者か
第二章 理想の国家とは何か
進化論の意味するもの/実在する人格としての国家/北一輝とプラトン
第三章 北一輝と革命
北一輝と戦後改革/平等はいかにして実現されるのか/絶対者をめぐって
嘉戸 一将[カド カズマサ]
著・文・その他
内容説明
北一輝は独学で国家論や社会主義論を学び、二三歳で主著『国体論及び純正社会主義』を自費出版するも発禁となる。国家主義としての社会主義という社会主義論を主張するが、その内実はマルクスではなくプラトンを起源としていた。生物が進化したように国家という人格もまた進化する―独自の構想による思想的営為を、近代日本思想史に位置づけた快著。
目次
第1章 国体論批判と理想の国家(国体論と北一輝;明治憲法体制をめぐって;「純正社会主義」の目指すもの;道徳と科学主義;「神類」とは何者か)
第2章 理想の国家とは何か(進化論の意味するもの;実在する人格としての国家;有機体としての国家と精神;北一輝とプラトン)
第3章 北一輝と革命(北一輝と戦後改革;北一輝における天皇;平等はいかにして実現されるのか;絶対者をめぐって)
著者等紹介
嘉戸一将[カドカズマサ]
1970年、大阪府生まれ。東京大学法学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程中退。現在、龍谷大学准教授。専攻は、法思想史、政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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