出版社内容情報
ヨーロッパ中世の社会を、伝説、民話、さらには法や経済などさまざまな位相から総合的に再構築し、共同体のあり方を生き生きと描き出した西洋史学の泰斗、阿部謹也(1935-2006年)。晩年は西洋史家ならではの視点から、「世間」を軸にした独創的な日本人論を展開したことでも知られる。
なぜ、日本人は「世間を騒がせて申し訳ありません」と謝罪するのか。無実ならば決して謝罪せず、世の中が納得するまで主張を続ける西洋との違いはどこから生まれるのだろうか。日本古来の「世間」と対比させつつ、西洋の「社会」を構成する「個人」や「愛」がヨーロッパで成立する過程を描き出した本書は、代表作『「世間」とは何か』を著者の本領たる西洋中世史から裏づける作品であり、一連の「世間論」の原点でもある。
著者は本書でこのように述べている。「大切なのは、わが国では、「社会」と「世間」という二つの用語の世界があるということを、まず認識することである」――。日本の共同体があらゆる水準で崩壊しつつある今こそ読みたい、人と人とのつながりの根源を照らし出す一冊。(原本:朝日新聞社、1992年)
内容説明
なぜ、日本人は「世間を騒がせて申し訳ありません」と謝罪するのか。無実ならば決して謝罪せず、世の中が納得するまで主張を続ける西洋との違いはどこから生まれるのだろうか。日本古来の「世間」と対比させつつ、西洋の「社会」を構成している「個人」や「愛」が成立する過程を綿密に描き出す、西洋史学の泰斗が晩年に到達した独自の日本人論の原点!
目次
1 世間と社会(世間の中の一人として;どのような世間に立脚しているのか ほか)
2 個人と人格の成立について(個人と人格のありかた;人格を求めて―アーロン・グレーヴィッチの問題提起 ほか)
3 神判の世界とケガレ(公と私の逆転;いまも呪術的な世界が―日常生活の次元で ほか)
4 西欧における愛のかたち(「愛」、その実質;プラトンと初期キリスト教における愛 ほか)
著者等紹介
阿部謹也[アベキンヤ]
1935‐2006年。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。一橋大学名誉教授。専門は西洋中世史。主な著書に『ハーメルンの笛吹き男』、『中世を旅する人びと』(サントリー学芸賞)、『中世の窓から』(大佛次郎賞)、訳書に『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』(日本翻訳文化賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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