内容説明
なぜ日本人は、草木や山川までもが成仏できると考えるのか?なぜ「ご先祖さま」をお祀りするのか?―ふだんは当たり前のこととして、何気なく見過ごされている日常の習慣、思考パターンにも、それぞれに隠された精神の歴史がある。日本思想史の第一人者とともに、さまざまな事象の中に「日本人の心の歴史」をたどる。
目次
序章 鳥居のある寺、死者を祀る社
第1章 聖性の覚醒―有史以前
第2章 定住する神々―始原から古代へ
第3章 救済者の探求―古代から中世へ
第4章 煉獄の拡張―中世から近世へ
第5章 還俗する来世―近世から近代へ
終章 神のゆくえ
著者等紹介
佐藤弘夫[サトウヒロオ]
1953年、宮城県生まれ。東北大学教授。東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了。博士(文学)。専門は日本思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒデキ
51
古来からの日本人にとっての 「カミ」が、どういった存在であったか、そして、現世と彼岸の距離感が、それぞれの時代の宗教や思想を作っていったことを時代の流れとともに解説してくれています。 古代からの死者と生者の距離は、私が、思っていたよりも近かったように思いました また、東北の人形を使った供養のようにずっと昔からあったと思っていたことが、割に近世なってからと頭の中にあった感覚が、結構、周りの影響で作られていたことも知りました2023/02/03
tamami
43
途中で読み止め!にしていた本書でしたが、最近読友さんの感想を読み、積ん読棚から取り出した次第。原始古代から現代に至るまで、日本人の「カミ」との関わりの歴史を記述する。日本思想と言えば、時代ごとの事物や人物のあり方、言動が列記され、いわば年表を覚えるにも似た思いで接してきた記憶がある。本書は、そんなカミ思想を生み出してきた歴史風土の奥底に焦点を当て、時代時代の聖なるもの、カミ観念の要諦について、大変説得的に説明してくれる。あとがきによれば、著者が以前世に問うた著作は、わが国の学界では全く受け入れられなかった2022/02/26
mstr_kk
11
すごい本! 日本の神についてのやさしい概説・入門書かと思って、軽い気持ちで読みはじめてみたら、驚愕。非常にユニークで濃密な議論が展開されていました。太古の昔から日本列島に生きてきた人々の精神の歴史として、明快な見通しを示してくれる、日本思想史のエッセンスといえる一冊。「日本古来のアニミズム」みたいな陳腐なイメージがくつがえされます。とても勉強になりましたし、納得させられたのですが、去年出たばかりの本で、著者独自の見解が刺激的である分、これがどれくらい定説として認められるのかはちょっとわかりません。2022/01/01
はちめ
7
とりあえず読み通したが何が言いたいのか全く分からなかった。現代の日本においてはミッキーマウスは神の役割を果たしているということかもしれないが、ミッキーマウスは米国でも神だろう。著者がいみじくも前作が学会から無視をされたと書いているが、本書も同じことになると思う。☆☆★2021/06/05
氷月
4
「「仏教」や「神道」の思想は、基本ソフトとしてのコスモロジーによってそのあり方を規定される応用ソフトのような存在だった」(p. 207)。例えば冒頭に出てくる川倉地蔵堂は鳥居の先に地蔵堂があり、教科書的には「神仏習合」と説明されるであろうが、しかしそこに満ちている死の臭いは「仏教」に収まりきるものでもないし、死を穢れとして嫌う「神道」でもない。既成の枠組みに囚われない、古代から現代までの日本人のカミ観の歴史。2023/05/04