内容説明
三井財閥と久能木一族が争った一等地・日本橋室町、薄幸の皇女の影をひきずる林野庁宿舎跡地、天海僧正が京都を模した上野の山…。どのような土地にも、時を経ても消えることのない歴史・記憶の堆積、「地霊(=ゲニウス・ロキ)」がある。それは、土地に結びついた連想性と可能性を生み、その可能性の軌跡が都市をつくり出していく。江戸から平成まで、近代の東京の歴史は、そうした土地の歴史の集積として見ることができるだろう。数奇な変転を重ねた都内13カ所の土地を、新しい視点から考察し、広く話題を呼んだサントリー学芸賞受賞作。
目次
港区六本木 民活第一号の土地にまつわる薄幸―時代に翻弄された皇女の影を引きずる林野庁宿舎跡地
千代田区紀尾井町 「暗殺の土地」が辿った百年の道のり―怨霊鎮魂のため袋地となった司法研修所跡地の変遷
文京区‐護国寺 明治の覇者達が求めた新しい地霊―その「茶道化」の立役者・高橋箒庵
台東区‐上野公園 江戸の鬼門に「京都」があった―いまも生きつづける家康の政治顧問・天海の構想
品川区‐御殿山 江戸の「桜名所」の大いなる変身―庶民の行楽地から時代の覇者達の邸宅地へ
港区芝 現代の「五秀六艶楼」のあるじ―「さつまっぱら」と郷誠之助と日本電気の関係
新宿区‐新宿御苑 幻と化した「新宿ヴェルサイユ宮殿」―造園家・福羽逸人の構想と三代の聖域
文京区‐椿山荘 目白の将軍の軍略にも似た地政学―権力者・山県有朋の土地と庭園に対する眼力
中央区日本橋室町 三井と張り合う都内最強の土地―九三坪二合九勺に賭けた久能木一族の意地
目黒区目黒 「目黒の殿様」がみせた士魂商才―明治の秀才・久米邦武の土地に対する先見の明
文京区本郷 東大キャンパス内の様々なる意匠―安田講堂はなぜ東大の“象徴”なのか
世田谷区深沢 東京西郊の新開地・うたがたの地霊―近衛文麿の末期の眼に映った巨大和風庭園の終焉
渋谷区広尾 昭和・平成二代にわたる皇后の「館」―前皇后が住まい、現皇后が学んだ土地の縁
著者等紹介
鈴木博之[スズキヒロユキ]
1945年東京生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。1974‐75年、ロンドン大学コートゥールド美術史研究所留学。1993年、ハーバード大学客員教授。現在、東京大学大学院工学系研究科教授(建築学専攻)。『東京の地霊(ゲニウス・ロキ)』でサントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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