出版社内容情報
子殺し、魔女狩り、ペスト、拷問、処刑――美術作品に描かれた身の毛もよだつ事件の数々。200点以上の図版から読む暗黒の西洋史。
内容説明
西洋には残酷美術の名画が数多くある。なぜこれほど凄惨な場面がくりかえし描かれてきたのか?そこに人間のどんな欲望と残虐性を読みとることができるのか?神話・聖書の怖いエピソードから、魔女狩り、子殺し、ペスト、拷問、処刑などの歴史上の事件まで、図版200点以上を収録。人間の裏面を抉り出す、衝撃の美術史。
目次
第1章 残酷なる神話の世界
第2章 聖書の裏面
第3章 暗黒の中世―血ぬられたキリスト教世界
第4章 拷問と処刑―魔女裁判を中心に
第5章 殺人と戦争―なぜひとびとは殺しあうのか
第6章 さまざまな残酷芸術―病・貧困・ヴァニタス
著者等紹介
池上英洋[イケガミヒデヒロ]
1967年広島県生れ。美術史家。東京造形大学准教授。東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了。専門はイタリアを中心とした西洋美術史・文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
108
神話、キリスト教、拷問、処刑、殺人、戦争、病やヴァニタス思想まで、血と死に彩られた芸術作品を主に絵画を中心に紹介する。人が持つ想像力の凄さや、何処までも残酷になれる恐ろしさを感じました。豊富な図版は眺めてるだけでも楽しい。文庫なので、図版のサイズがやや小さいのが残念ですが、また別の大判な画集などで調べてみようと思います。クレメンテ・スジーニの「ヴェネリーナ」が凄い。圧倒されます。2017/05/01
HANA
58
人生は様々な苦に満ちている。原因が神であれキリスト教であれ戦争であれ病であれ、どのようなものにしても人間を苦しめる因には事欠かない。ここでは様々な人間苦がひたすら絵や彫刻といった形に残されている。ここに紹介されている作品には写実的であるにしても象徴的であるにしても、目を背けたい描写の中に奇妙な静謐さが漂っている。個人的には見識が浅いため、美術論より作品をダイレクトに紹介してくれる本はありがたい。カラーで図版多数なのも嬉しいところ。気に入っている作者の一人であるズンボや類似した作品があるのはありがたかった。2014/12/25
kaori
45
西洋における残酷な歴史を絵画をもとに紐解く作品。ギリシア神話から聖書世界、中近世に至るまで、人間の歴史には常に残酷な裏面がつきまとう。正直読んでいて身震いするほど残酷なものもあった、だが目が離せなかった。それは序文に近世以前において純粋に個人の趣味として創作された美術作品はなかった、の一文で理解できる。画家たちは人々に何かを伝えるために描いた。それは教訓であり、嘆きであり、非難であり、祈りでもあった。何より人生を想い、死を想い描かれた作品だから、ただ恐ろしくおぞましいだけではなく、強く魅かれるのだと思う。2015/03/05
ホークス
36
残酷な絵画をテーマ別に解説。図版多数。テーマの半分は、イエスの受難、殉教者、魔女狩りと言ったキリスト教関係で、他は拷問、処刑、戦争など。病気、治療は絵が本当に痛そう。麻酔無しで頭蓋骨に穴を開けたりする。全体には女性差別の徹底ぶりに背筋が冷たくなった。身分制や命自体の軽さがあるとはいえ、酷いものだ。著者は、なぜ人は殺し合うのか、なぜ残酷になれるのかを問う。特に異教徒への残酷さには罪の意識すら感じられない。宗教ではなく空気に依存する日本人の場合、異教徒とは空気を共有できない者のことだ。空気嫌いには恐ろしい。2019/07/27
Vakira
36
読友さんの紹介で興味が湧き読んでみた。文庫本だが半分はカラーなので、絵の表現力や物語性は伝わってくる。ギリシャ神話、聖書の物語、魔女裁判(拷問と処刑)、戦争や殺人など、普段の美術館展ではなかなか出合えない作品の紹介。美術史という題名だけあって歴史的な話が説明され、その描かれた背景を知り、納得。そういえばギリシャ神話も旧約聖書も残酷な物語が結構ある。池上英洋さんの「残忍で卑怯な、そして不潔でみじめな主題を扱った美術によってこそ西洋文化を理解するための手掛かりが得られるはず。」との解説に成程!と・・・2015/05/01