出版社内容情報
古代から続くめくるめく同性愛の世界。西洋史の運命を狂わせた美男子たち。芸術家を虜にしたその裸体。カラー含む200点以上の図版で実像に迫る。
池上 英洋[イケガミ ヒデヒロ]
川口 清香[カワグチ サヤカ]
内容説明
神々が愛したかわいくエロティックなクピドたち。古代の英雄や皇帝たちを狂わせ、歴史の運命を大きく動かした少年愛のめくるめく世界。中世キリスト教社会で、激しい抑圧のなか密かに紡がれた同性愛的嗜好。そしてルネサンス期を迎え、ふたたび花開く男たちの肉体美―。西洋美術には美少年を描いた傑作が数多く存在する。彼らはなぜこれほどまでに芸術家たちを虜にし、その創造力をかきたててきたのか?ときに勇ましく、ときに儚げに描かれたその姿に、人類のどのような欲望が刻み込まれているのか?アート入門としても最適。カラーを含む200点以上の図版とともに辿るもうひとつの西洋史。
目次
第1章 少年愛の誕生
第2章 神話世界の美少年
第3章 キリスト教と美少年
第4章 美少年の復活(ルネサンス)
第5章 「少年」の発見―近代における変容
第6章 さまざまな美少年美術
著者等紹介
池上英洋[イケガミヒデヒロ]
1967年広島県生まれ。美術史家、東京造形大学教授。東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了
川口清香[カワグチサヤカ]
ライター。恵泉女学園大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
84
タイトルに惹かれて手に取りました。美少年好きには垂涎ものの本。豊富な図版掲載で読みやすく、大いに楽しめました。古代ギリシャの同性愛のルーツから、ギリシャ神話、キリスト教、そして風俗画へと画題が変遷していく中で脈々と生き続ける美少年たち。憂いを含んだ眼差し、薔薇色の頬、官能的な唇、しなやかな筋肉に覆われた均整のとれた完璧な肉体ーーそこには人の理想とする完全な「美」が宿っている。本書の内容としては、やや浅い気がするけれど、解りやすいので絵画を鑑賞する上でも入門書として最適。他のシリーズも読んでみたいです。2016/10/06
HANA
61
古代ギリシアからルネサンス、風俗画まで、美術の世界に現れた美少年を追った一冊。前二冊同様図像多数なところが非常に嬉しい。やはりこういうテーマは図像あってのものだしね。キリスト教以前以降、ルネサンス以降という時代区分があるせいか、前二冊に比べ「史」としてわかりやすい。称揚されていたものが伏流水化し、再び違う形で表に現れてくると違った形になっているのもまた面白いし。とはいえ古代の伝説を扱った章も、ルネサンス以降の作品が多め。禁じられていたものが、伝説の名を借りて一気に噴き出したようにも読んでいて感じられた。2016/08/25
ももっち
46
腐女子をルーツとする者なら、この本を見かけて無視することは難しいでしょう。これはもう性(さが)なのです。まだ柔らかいしなやかな筋肉に、中性的な端正な顔立ち。男性になりきらない性別を超越した瞬きする間の輝き。美術史の一端を担う美少年美術が、素人に程よいアカデミックさで語られ、掲載された美しい作品達に魅了され、うっとりしてしまう。そもそも少年愛に、女性蔑視が根底にあろうと、過去の文化に対して憤ることもありません。ジムやシンポジウムの語源など雑学も興味深い。2016/09/05
ちゃりんこママ
39
私の「好き」が一杯詰まっておりました。印刷も内容も良いので文庫版でも不満は無いけど、B5版くらいで再版したら私は買うけどな。2017/05/02
zirou1984
39
日本酒メーカーに美少年ってあるけど、あれを頼むときの気恥ずかしさって何でしょうね。古代ギリシャにおける男性同士の友愛から始まる、少年を愛でる西洋芸術の系譜。それは倫理や神話の構造を写し出す鏡であり、同時に時代のコードを逸脱しようとする者が取り上げる格好のアイコンでもある。特に、レオナルド・ダ・ヴィンチが偉人を両性具有者の美少年として描いているという話は衝撃だった。史実やエピソードの数々も面白いのだが、見目麗しい絵画彫刻がカラーで多数収録されている為お外で読むには憚られる充実さが心憎い。タイトルも最高。2016/12/07