内容説明
薩摩藩第八代藩主、島津重豪(一七四五~一八三三)。婚姻政策により将軍家外戚の地位を得、また、藩の開化政策を積極的に推進し、内外に大きな影響を及ぼしたその治世の背景には、基盤としての学問・文化があった。藩内外との交流や重豪の文化政策を多角的に捉えることで、地域史を越え、日本そしてアジア・西欧を結ぶ歴史像を描き出す。
目次
1 薩摩の学問(重豪と修史事業;蘭癖大名重豪と博物学;島津重豪の出版―『成形図説』版本再考)
2 重豪をとりまく人々(広大院―島津家の婚姻政策;島津重豪従三位昇進にみる島津斉宣と御台所茂姫;学者たちの交流)
3 薩摩の文化環境(島津重豪の信仰と宗教政策;近世薩摩藩祖廟と島津重豪;『大石兵六夢物語』小考―島津重豪の時代と物語草子・絵巻;薩摩ことば―通セサル言語)
4 薩摩と琉球・江戸・東アジア(島津重豪の時代と琉球・琉球人;和歌における琉球と薩摩の交流;島津重豪・薩摩藩と江戸の情報網―松浦静山『甲子夜話』を窓として)
著者等紹介
林匡[ハヤシタダス]
鹿児島県歴史資料センター黎明館学芸課長。専門は近世史(薩摩藩政史、文書管理史、系譜・由緒論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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志村真幸
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薩摩藩の8代藩主・島津重豪について、多方面から切りこんだ論文集である。 論文13篇とコラム4本から構成されている。 博物学的な趣味で有名な人物であり、その鳥や本草への関心を扱った章もあるものの、そうした面だけではなく、異例なほど長期にわたって藩政を統括しつづけたことに関連して、その政治的手腕の再評価も試みられている。重豪の信仰の在り方や、祖先への顕彰についても興味深いテーマがとりあげられる。 執筆陣は近世史や近世文学の研究者にくわえて、地元鹿児島で歴史にとりくんでいるひとたち。2021/08/01