内容説明
『雪国』や『源氏』の名翻訳者にして、荷風文学と小津の映画を鍾愛した文人。湯島に住みなして下町の四季と文化を探り、愛猫花子の死を悼む。佳什34篇。
目次
春の渡り鳥
藤三題
夏の下町
薪能
「都市」の川を楽しむ
谷中、花と墓地
朝顔の夏
独立記念日の戦争
山の手と下町
下町取材綺譚〔ほか〕
著者等紹介
サイデンステッカー,エドワード・G.[サイデンステッカー,エドワードG.][Seidensticker,Edward G.]
1921‐2007。アメリカ・コロラド州の農家に生まれる。海軍日本語学校で日本語を学んだ後、第二次世界大戦に出征、日本に進駐。その後連合軍外交部局の一員として滞日し、そのおり東京大学にて日本文学を研究する。スタンフォード大学、のちコロンビア大学にて日本文学を講ずる。谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫らの現代文学を英訳、わけても川端の『雪国』の翻訳は彼のノーベル文学賞受賞に多大の寄与をなした。また、A・ウェイリーに続いて『源氏物語』の完訳を果たした
山口徹三[ヤマグチテツミ]
1948年佐賀県に生まれる。友人の故福田裕氏と共に、著者の東京暮らしをサポートした。現在、湯島にて版画の仕事に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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timeturner
7
下町を愛した日英翻訳家によるエッセイ集。著者名を見ずに読んだら教養高い日本人老作家の随筆と思ってしまう内容と文章だ。1986~2006年に書かれたものなので懐かしい風景にも出会える。暖かくなったら花の名所を歩いてみようかという気になった。2021/01/31
あられ
3
先日根津に行った 街の風情が面白かった 書架でこの本を見つけて手が伸びた なんとまあとんでもない方だったのですね 川端康成も谷崎潤一郎も読んだというほど読んでいないので恥ずかしい限り 異国の文化や風情を感じることのできる人がどこにも表れる奇跡を思った 頑固で歯に衣着せぬ物言いはなかなかだが、根底に日本を思う気持ちを感じた 良い読書をした そんな感想を持った2021/12/01
さ ぼ
2
上野のれん会の発行する雑誌「うえの」に連載されたものだそうで、それゆえか親しみを覚える文章。「サイデンさん」と東京を散歩している気分になりました。2013/04/16
tsu55
0
源氏物語や川端文学の翻訳で知らるエドワード・G・サイデンステッカーの随筆集。 サイデンステッカーの日本語の著書の多くは、いったん英語で書いたものを翻訳者が日本語に訳したもだが、この本に納められている随筆は、はじめから日本語で書かれたものだそうだ。 書名は『谷中、花と墓地』となっているが、著者の筆は、日本での住まいがあった湯島から始まり、池之端、谷中、山谷、源氏物語、小津映画、永井荷風川端康成と、広がっていく。 「日本的な感性」を愛したサイデンステッカーの、関心のありかが見えてきて興味深い。
メルセ・ひすい
0
『源氏物語』 私見 が凄い! ・・・寂聴 『源氏物語』は何度目を通しても気がつかなかったことが始終出てくる、ということを言いたい。面白い説もあるが、ナンセンスな説も少なくない。しかし、とめどなく新説が生まれてくる。そういう作品である。・・・一番は人物描写の魅力・・・ 対カフカ論 相当の書を処分したが・・・・ 最期 まで捨てられない書。 2008/09/01