出版社内容情報
★好評3刷出来
内容説明
藤原道長が栄華を誇った時代。都ではどのようなニオイがしたのか。排泄・廃棄物・動物・死など、暮らしと切り離せないさまざまなニオイを再現。一方で、薫香の文化を芸術にまで昇華させた貴族の心性を浮き彫りにする。
目次
臭いと匂い―プロローグ
糞尿都市
屍臭都市
生活の中のにおい
物語が描く匂い
貴族の生活環境とにおい
記録されないにおい―エピローグ
著者等紹介
安田政彦[ヤスダマサヒコ]
1958年、石川県に生まれる。1985年、関西学院大学大学院博士課程後期課程単位取得退学。帝塚山学院大学文学部教授、博士(歴史学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
27
これほどまでに臭い本があったろうか? もちろん本からは匂う訳ではない。その時代からそうした匂いが感知されれば、読者としてはよいのではないか。平安京にも様々なにおいがあったはずである(2頁)。排尿は明治に至っても立ち小便が当たり前。検非違使が汚穢を清掃していたようだ(44頁)。太郎焼亡:大内裏含めて180町焼失、左京域の3分の1被災。焼死者数千人。次郎焼亡:太郎焼亡で焼失を免れた地域30数町被災(69頁)。白粉に香がついたのは19Cに入ってからとのこと(133頁)。2015/10/03
びっぐすとん
18
図書館本。『源氏物語』『枕草子』からは窺い知れない平安京のニオイのお話。汚穢、糞尿にはじまり、ヒト、動物の死臭、腐敗臭が蔓延する花の都。人の死骸が街中に山積みって、死臭なんて未体験だが恐ろし過ぎる。清涼殿まで狐が入るって警備は穴だらけだし、これじゃ病気も蔓延するはずだ。死んだら犬に食べられる人生は嫌だ。穢れより臭いの方が切実だと思うけど、貴族もこの臭いを知らなかった訳じゃないのに、なぜ放置できたのか?最後はいい薫りの薫物で締めているが、匂いでごまかすより、清潔が一番だと思う。ニオイって麻痺するから恐い。2019/11/23
B.J.
11
悪臭か、芳香か。においをキーワードに平安貴族の暮らしを再現・・帯より2023/06/29
ワッピー
8
歴史としては扱いにくい日常のニオイの世界・・・平安京を貴族から見るか、庶民から見るかでだいぶニオイも違うのだろうか?死者が満ち溢れるような状況では、いくら生活圏が違うとはいえ、都中屍臭が立ち込めていたのではないかと思います。日常の感覚は資料に残りにくいこともあるでしょうが、貴族はむしろ現状をことさら見ない方向に進み、来世の救済を渇仰する時勢と相まって仏教的価値観を取り入れて、よいニオイを文学的メタファーに進化させたのではないでしょうか?2011/12/03
遊未
7
庶民のニオイと貴族の薫り?本でも映像でも一番伝わらない部分だと思います。私には貴族の薫りの方がわからないけど。入浴も暦に縛られているから大変。そして、屍臭より死穢が問題。火事は多かったから、大規模だし染み着くし。総じて現代人には耐えられそうにない世界であったことでしょう。2022/03/06