内容説明
学生相談やスクールカウンセリングを変える「臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチ」。これは、問題を周囲の人々との関係の中で捉え彼らに働きかける、狭義のカウンセリングの技法にこだわらず多様な方法を用いる、問題解決に際してクライエント本人の力を重視する、というもの。既存のいくつかのアプローチを、よいところはそのままに統合・発展させ、個からネットワーク、支援システムまでを視野に入れて、日に日に増す「こころの健康」へのニードに応えようとする斬新な方法である。コミュニティ臨床心理学は、多職種とどう協働していくか、ということを含み、これは臨床心理士に限らず、あらゆる援助職や学校関係者がもちたいと願っている力ではないだろうか。統合失調症の大学生、DV被害の女子学生、問題行動がめだつ中学生、学力低下の大学生、教師のハラスメントが発覚した高校…筆者の経験した多様な事例を読みながら、「個の変容」と、「個と環境の適合」の両方をしなやかに援助するhow toを、学べる1冊。
目次
第1部 臨床心理学の新しい活動モデルをめぐって(コミュニティにおける心理援助の課題;臨床心理学における新しい活動モデルの提案)
第2部 臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチの創出―実践を通してのモデル生成(精神科デイケアにおける統合失調症者への支援事例から;キャンパスにおける統合失調症学生への支援事例から;臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチの創出)
第3部 臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチによる援助の実際―実践を通しての検討過程(DV被害学生への支援事例から;荒れた中学校へのシステム・コンサルテーションの事例から;修学問題のためのキャンパス・トータル・サポートプログラムの事例から;学校コミュニティへの緊急支援システムの構築と運用―教師の不祥事発覚後の高校への支援事例から)
第4部 臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチのモデル化(臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチの定義と構成要素;臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチのプロセス;臨床心理学的コミュニティ・エンパワメント・アプローチ実施上の留意点)
まとめと今後の課題
著者等紹介
窪田由紀[クボタユキ]
1975年京都大学文学部卒業。1980年九州大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得後退学。1982年~1993年北九州市立デイケアセンター臨床心理士。1993年~1998年九州国際大学助教授。1998年~2004年同教授。2004年~九州産業大学国際文化学部臨床心理学科教授。臨床心理士。博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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