コレクション日本歌人選<047> 源平の武将歌人
上宇都 ゆりほ 著
内容
目次
01 中々に言ひも放たで信濃なる木曾路の橋のかけたるやなぞ(源頼光) 02 木の葉散る宿は聞き分くことぞなき時雨する夜も時雨せぬ夜も(源頼実) 03 夏山の楢の葉そよぐ夕暮は今年も秋の心地こそすれ(源頼綱) 04 吹く風をなこその関と思へども道もせに散る山桜かな(源義家) 05 思ふとはつみ知らせてきひひな草わらは遊びの手たはぶれより(源仲正) 06 もろともに見し人もなき山里の花さへ憂くて訪はぬとを知れ(同) 07 有明の月も明石の浦風に波ばかりこそ寄ると見えしか(平忠盛) 08 うれしとも中々なれば石清水神ぞ知るらん思ふ心は(同) 09 思ひきや雲居の月をよそに見て心の闇にまよふべしとは(同) 10 またも来ん秋を待つべき七夕の別るるだにもいかが悲しき(同) 11 深山木のその梢とも見えざりし桜は花にあらはれにけり(源頼政) 12 人知れぬ大内山の山守は木隠れてのみ月を見るかな(同) 13 庭の面はまだかわかぬに夕立の空さりげなく澄める月かな(同) 14 埋もれ木の花咲くこともなかりしに身のなる果てぞ悲しかりける(同) 15 卵ぞよ帰りはてなば飛びかけり育くみたてよ大鳥の神(平清盛) 16 家の風吹くともみえぬ木の許に書き置く言の葉を散らすかな(平経盛) 17 いかにせむ御垣が原に摘む芹の音にのみ泣けど知る人のなき(同) 18 今ぞ知る御裳濯河の流れには波の下にも都ありとは(平時子) 19 燃え出づるも枯るるも同じ野辺の草いづれか秋に逢はで果つべき(祇王) 20 眺むれば濡るる袂に宿りけり月よ雲居の物語せよ(源仲綱) 21 恋しくは来てもみよかし身に添へる影をばいかが放ちやるべし(同) 22 伊勢武者はみな緋縅の鎧着て宇治の網代にかかりぬるかな(同) 23 今日までもあればあるかの我が身かは夢のうちにも夢を見るかな(平教盛) 24 返り来む事は堅田に引く網の目にも溜まらぬ我が涙かな(平時忠) 25 墨染めの衣の色と聞くからによその袂も絞りかねつつ(平重盛) 26 浄土にも剛のものとや沙汰すらん西に向かひて後ろ見せねば(熊谷直実) 27 さざ波や志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな(平忠度) 28 行き暮れて木の下蔭を宿とせば花や今宵の主ならまし(同) 29 いづくにか月は光を止むらん宿りし水も氷ゐにけり(平親宗) 30 都をば今日を限りの関水にまた逢ふ坂の影や映さむ(平宗盛) 31 源は同じ流れぞ石清水堰き上げて賜べ雲の上まで(源頼朝) 32 陸奥の言はで忍ぶはえぞ知らぬ書き尽くしてよ壺の碑(同) 33 和泉なる信太の森の尼鷺はもとの古枝に立ち返るべし(同) 34 散るぞ憂き思へば風もつらからず花を分きても吹かばこそあらめ(平経正) 35 千早振る神に祈りのかなへばやしるくも色の表れにける(同) 36 住み馴れし都の方はよそながら袖に波越す磯の松風(平知盛) 37 思ひきや深山の奥に住居して雲居の月をよそに見むとは(建礼門院徳子) 38 澄みかはる月を見つつぞ思ひ出づる大原山のいにしへの空(平重衡) 39 住み馴れし古き都の恋しさは神も昔に思ひ知るらん(同) 40 積もるとも五重の雲は厚くとも祈る心に月を宿さん(北条政子) 41 いづくとも知らぬ逢瀬の藻塩草書き置く跡を形見とも見よ(平維盛) 42 生まれては終に死ぬてふ事のみぞ定めなき世に定めありける(同) 43 六道の道の衢に待てよ君後れ先立つ習ひありとも(武蔵坊弁慶) 44 思ふより友を失ふ源の家には主あるべくもなし(源義経) 45 ある程があるにもあらぬうちになほかく憂き事を見るぞ悲しき(平資盛) 46 流れての名だにも止まれ行く水のあはれはかなき身は消えぬとも(平行盛) 47 昨日こそ浅間は降らめ今日はただ三原なぎ給へ夕立の神(梶原景季) 48 しづやしづ倭文の苧環繰り返し昔を今になすよしもがな(静御前) 49 宇津の山現にてまた越え行かば夢と見よとや跡残しけむ(宇都宮頼綱) 50 我が来つる道の草葉や枯れぬらむあまり焦がれて物を思へば(源義高)
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