出版社内容情報
【内容紹介】
小高い丘、明るい斜面に営まれる古くて深くて豊かな町。街路は劇場、中庭は生活の場となる。カラー版・地中海都市の魅力ガイド。
チステルニーノ──ローカル線の駅で降り、オリーブの樹やトゥルッリの建物が点在するのどかな田園風景を楽しみながら、坂道を上っていくと、丘の上に白い家々が見えてくる。徐々に空間の密度が上がり、やがて旧市街の迫力ある外観が目の前に現れる。イタリアの中世都市へのアプローチは、このようにいつもダイナミックだ。ポルタ・グランデ(大きな門)という城門をくぐり、この町の旧市街に一歩踏み込んだ時の衝撃を、私は今も忘れない。まるで、雪で築き上げられた大きな迷宮の世界に彷徨い込んだ感じだった。道は狭くて曲がりくねっている。両側の建物の壁は歪み、すべて石灰で真っ白に塗られている。道幅は狭いのに、建物は何層にも重なっている。外階段がふんだんに活用されて、3階へ、そして4階へとアクロバット的に上へ伸び、まさに立体迷路を構築しているのだ。──本書より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
366
陣内秀信先生、自家薬籠中の南イタリア。ナポリから始まって14の主に小都市を巡る考察と案内。たしかに北イタリアの諸都市と比較すると幾分か馴染みも薄いし、実際の旅行先として選ばれることも少ないだろう。私も以前から気は魅かれつつも行ったことがない。依然としてローマが旅の南限である。スパッカナポリを闊歩したいのはヤマヤマではあるものの、腰が引けるのも事実である。行くとしてもソレントあたりを拠点に空身でポンペイを訪れ、その帰りにナポリピッツァのお店にと考えてしまう。アルベルベッロなんかにも行ってみたい。2021/08/18
Nat
17
南イタリアに行ってみたくて、つい手に取りました。今から20年くらい前の本なので、この本の内容とは少し違っているとは思うのですが、興味深い街ばかりでした。特に行ってみたい所が、チステルニーノ・アルベロベッロ・マテーラです。いつか行きたいな。2018/12/28
うえ
9
南イタリア14の都市を巡る。山上の聖天使の町モンテ・サンタンジェロは自然の洞穴を利用して作り出された聖なる洞窟を中心に構成されているという。その起源は、490年以降大天使ミカエルが四回にわたり出現、洞窟を聖所にするよう告げ、奇跡を行った。493年の三回目の出現の後、洞窟に住民が行ってみると、すでに祭壇と十字架があり、祈祷堂になっていた。岩の上には聖ミカエルの足跡が残されていたという。「古来、人間は洞窟や山頂に宗教的な雰囲気を感じ、そこにしばしば祠を設けてきた。聖ミカエル信仰は特にその傾向を強く示す。」2022/11/07
kanaoka 56
7
南イタリアの幾つかの町の建築を綴った本ですが、そこに、辿ってきた歴史の重みと息づく人々の生活感が伝わってきます。十分に時間をかけて出掛けたくなりますね。2016/01/03
belier
4
南イタリアは、様々な時代の歴史的建築様式が見られるので楽しい。本を読みながらストリートビューを見始めたら読書にならなくなりそうで、さらっと読んだ。読書とは別に部屋で旅行気分をじっくり味わおうと思う。特殊な興味を惹かれたのはサルデーニャ島で、新石器時代の遺跡やその時代の墓が初期キリスト教の教会に転用された建築物があり、人々は古来の文化を忠実に守っていること。他で知ったが、最近のDNA研究によると、ここの島民はその新石器時代人のDNAを保有する希有な存在らしい。文化的にもそれが現れていることに感動した。2023/05/05