内容説明
一家離散後、十歳で渡日した著者は、たちまち差別の目に囲まれる。二年間だけ通った昼間の小学校では危く「金山忠太郎」にならずにすむが、職を転々とする間、この名前はついてまわる。念願の学生となり創作に取組む時、著者の「総主題」は定まっていた。肉親への思い、友情、そして恋愛も、差別との対峙と深く関わる。ユーモアを湛えた悠揚迫らぬ筆で描かれたこの半生記は、在日朝鮮人の苦闘の根を照し出してあますところがない。
目次
離郷
イルボンの地
小学校の三年間
職を求めて
屑屋修業
友と共に
学生となる
処女作のころ
恋愛をして
京城日報記者
関釜連絡船
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YUTAKA T
3
著者の幼少期から終戦までの自叙伝。植民地下の朝鮮で家の土地が失われて没落していく。働く場を求めて祖母を残して少しずつ家族が日本へ移住する。日本で慣れない日本語を学び、あちこちで必死に働いたが、最終的には屑屋(くずや)で少しずつお金を貯めて大学へ進学。小説家への道を進むために新聞社に就職して活躍していくまでを活き活きと描いている。道を歩いているだけでも、朝鮮人とわかれば、「チョーセンジンだ。やーい、チョーセンジン」と馬鹿にされ、石を投げられるという環境の中で、文学に生きようと決意していく過程が感動的である。2020/06/18
青木潤太朗
1
内容にいわゆる偏りがなく、上質な新聞記事を読んでいるようでもあり、叙情詩として非常に上手い。読んでて楽しい話などほぼ無いが、有無を言わせず読ませる迫力があります、やはり本人の経験したことそのままだからなのだと思います2011/05/28