出版社内容情報
伝統と矜持のある出版社の終焉は言論という人格の死、文化の死。その盛衰の一部始終を愛惜し、再生を祈って書かれた感動の一冊!
内容説明
中央公論社は、なぜ自主的活動に終止符をうち、読売新聞社の傘下に入らなければならなかったのか?それはかけがえのない、ひとつの文化と時代の終焉。本書は、内紛の渦中に身をおいた著者が、初めて明かす、貴重な歴史的証言であると同時に、言論とは人格にほかならぬ、という信念を生きた一編集者の真率な手記である。
目次
第1部 回想(修業時代;七十周年記念祝典;『婦人公論』と『思想の科学』;60年安保と「風流夢譚」事件;『中央公論』編集次長;出会いの季節)
第2部 修羅と愛惜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ステビア
16
総合雑誌華やかなりし頃を語る。労働争議が大変だったらしい。柳田邦夫という当時活動家だった文筆家を知る。2020/04/10
ぽん教授(非実在系)
2
現実主義論争を引き起こすきっかけをつくった高坂正堯など多くのリアリスト知識人を育てることになった著者は戦後中央公論社の黄金期を体験し自らけん引する立場になった。嶋中社長ら個性的で有能な社員たちと伝統ある出版社という華々しい職場は、言論事件やストなどの混乱をきっかけに空中分解し始めていく。一回悪い方向に回りだした組織は、社員が個性的であるほどに遠心力を発生させていく。肝心の嶋中社長は逆境に弱いリーダーであった……。消え去り行く人々の調べを奏でる、一出版社の栄華盛衰という歴史の断片である。2017/08/09
sonohey
0
中央公論社をめぐる自伝。元編集者が、筑摩書房と同じく経営破綻した出版社について「終焉という事態」に陥ったからこそ語る、社長嶋中鵬二を中心とする会社の栄光と挫折。その要因(のひとつではある。もちろん筑摩書房と共通する部分もあるだろう)とされる皇室にまつわる小説掲載が引き起こした殺傷事件と、そこから派生した、「言論の自由」侵害の果ての組合との紛争……しかし、これは言論機関の避けてはいけないリスクか。2014/03/02