出版社内容情報
近代日本の代表的法学者で、戦後労働争議の調停に奮迅の活躍をして逝った著者(1888〜1951)は、条文のみならぬ社会生活に欠かし得ない法について、この後も不朽と思われる叡智に満ちたエッセイを平易な表現で書いた。その精粋を二巻に纏めるうち本巻は総論に相当する。
内容説明
ふだん意識にも上らないものながら、何かの折に暮しに極めて密接な形で厳然と立ち現れる法、もはや現代社会の維持・発展に必要不可欠となっているこの法というものは、一体どうあるべきなのか?本書の各エッセイは、これを基本命題として、法の特異なる諸相を挙げつつその意味あいを興味深く探り、法を人間味のあるもの、国民のためのものとするにはどうしたらよいか、徹底した理智と気迫をもって考察を進めている。
目次
1 日本の政治・社会と法
2 法律・裁判・行政
3 学問と教育
4 法律学と法学教育
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Don2
13
約100年前に出版された東大法学教授による評論集。当時の法学では、精緻な法体系による原理主義的法的判断が主流だったらしい。末弘先生はこれに対し、法律はあくまで判決の一貫性を担保する目安なので、法の許す範囲で個別事情を汲んだ判決を、という立場。この立場から、嘘による法的柔軟性の確保とか、市民の信頼に基づく法制度構築・運用を議論する。私はかねてから倫理問題の実際的解決法に興味があったのだが、法では論理一辺倒ではなく裁判官の良心に委ねて解決するのかと得心した。内容・文体共に読みやすく、法に対する理解が深まる良書2022/06/19
てれまこし
13
フォロワーさんに勧められて読んだが面白かった。著者は東大法学部の先生だが、本書のように一般読者に広く読まれる軽妙な文章も得意としたらしい。ドイツ法が支配的な日本法学会では異端児であったが、面白いのはドイツに留学するつもりであったのが第一次大戦の影響で米国行きとなったのがきっかけという話。大正デモクラシーは独から英米へのモデル転換という一面があったから、これまた一つの象徴的史実である。だが、一高で岩元禎の元で学んで、よい意味での教養主義的素地があったからこれができたと思われる。法学に限られない教養があった。2022/01/18
こたつ
1
『役人学三即』と同じく、末弘厳太郎のエッセイ集です。表題の「嘘の効用」が面白かったです。2017/10/05