内容説明
近年、ふたたび注目をあびつつある宮沢賢治の世界―その中でも、もっとも愛され、読みつがれてきた「風の又三郎」、この作品にはさまざまの謎がかくされている。その謎を解いてゆくことは、宮沢賢治という巨人の謎にもふれることになる。
目次
1章 題名の謎―なぜ「風の又三郎」か
2章 ウタの謎
3章 九月一日の謎
4章 九月二日の謎
5章 九月三日の謎
6章 九月四日の謎
7章 九月五日または六日の謎
8章 九月七日の謎
9章 九月八日の謎
10章 九月九~十一日の謎
11章 九月十二日、第十二日の謎―高田三郎はどこへ行ったか
結論―高田三郎は風の又三郎か
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
21
一見して、「銀河鉄道の夜」よりも神秘性が少ないと思われがちな作品だが、その読み解きには、十分すぎるほどの謎が満ちている。そもそも「銀河鉄道」とちがって、先行する作品を何種類も取り込んで、ひとつの作品としてまとめられている、というところが、全体としての不統一の原因でもある。それにもかかわらず名作として、大きな評価を得ているというのが、さすがに賢治である。冒頭からラストまで、順に読み解かれる「又三郎」の謎。果たして高田三郎は又三郎だったのか? それこそが最大の謎だ。言わずもがなの。2014/10/03
原玉幸子
3
近年流行りの『謎解き……』の走りでしょうか、折角なので宮沢の本話を読み直してから本書を読みました。宮沢の思いをして児童文学なりに解釈すれば、本話自体が、謎を解かずともそれなりに子供の恐怖心や興味心を味わえるいい作品なので、簡単に「まぁ、そこまで突っ込まんでも」と思います。私にとっての「謎解き」で言えば、小説自体が『源氏物語』の謎解きの丸谷才一『輝く日の宮』や、石川啄木との絡みで夏目漱石『こころ』を読み解いた高橋源一郎『日本文学盛衰史』での一篇が感激モノでした……(◎2019年・春)(●2019年・春)2020/04/03