出版社内容情報
ポーランドの大貴族ポトツキ(一七六一-一八一五)が仏語で著した大伽藍のような小説。フェリペ五世治下、シエラ・モレナの山中をさまようワロン人衛兵隊長アルフォンソの六十一日間の手記によって、彼が出会った謎めいた人々とその数奇な運命が語られる。作者没後、原稿が四散し、二十一世紀に全容が復元された幻の長篇、初の全訳。(全三冊)
内容説明
ポーランドの貴族ポトツキ(一七六一‐一八一五)が仏語で著した奇想天外な物語。シエラ・モレナの山中をさまようアルフォンソの六十一日間の手記によって、彼が出会った謎めいた人々と、その数奇な運命が語られる。二十一世紀に全容が復元された幻の長篇、初の全訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
106
岩波文庫の新刊3冊で出版されたということで読み始めました。スペインのマドリッドまで行こうとしている人物が様々な出来事に会うということで毎日の出来事が書かれています。ただその物語が入れ子のような感じになっていてどんどんかかわる人物などが登場して込み入ってきます。最初に第一デカメロンと銘打っていてその後毎日の話が出てきます。千夜一夜物語のような感じもするのですがとりあえず3巻全部を読みとおそうと思っています。2023/11/20
syaori
79
舞台はスペイン、フェリペ五世の時代。盗賊や幽霊が跋扈する山中に踏み入った若き軍人アルフォンソの前に母方の従姉妹を名乗るムーア人の美女たちや山賊、カバラ学者などが現れて自身の体験を語ります。それはイスラームの隠し財宝、六枚羽の双子の天使、新大陸の副王と一つの幻想から次の幻想へと目くるめく続いていって幻惑され魅了されずにはいられません。アルフォンソにふりかかるのは母方の一族の試練か悪魔の誘惑か。また徳を据える「確固とした原理」とは何なのか。男と女、生者と死者が奇妙に入れ替るジプシーの族長の物語を追って次巻へ。2023/02/24
藤月はな(灯れ松明の火)
78
幻想小説の一翼として知られる小説が岩波文庫で刊行!岩波文庫の様々なジャンルを許す内包力は本当に有難い!お陰様で面白い本に出会えるからね!さてカトリックの騎士が旅で知り合った人々から物語を聞かされるという入れ子細工のような物語だが、どれも面白く、『千夜一夜物語』のスルタンと同じく、「続きは?」と訊きたくなる位。閨を仄めかした表現もあって中々、エロティック。恋人同士である従兄妹の為に女装して嫁入りするも男とバレる事に怯えるアバドロ。大丈夫だ、アバトロ。今だと男とバレてもBL展開になるから!←どこがじゃ(笑)2022/11/19
HANA
76
読んでいる間中、迷宮に誘われその中をひたすら彷徨する心地がする。基本的な骨子はマドリッドに向かう騎士の遍歴だが、その道中のほとんどが他者による話を聞くことによって成り立っているという千夜一夜を思わせる構成。さらには語り手がイスラムの美女姉妹から悪魔憑き、山賊、カバリストとその妹、ジプシーと次々に移り変わり、話自体も有機的な繋がりを持つかと思うと中途半端に終わるのもありと、常にこちらは幻惑されっぱなしであった。以前から完訳を期待されていたのだが、実際読むと物語の迷宮という大伽藍に目がくらむような本でした。2022/10/02
彩菜
46
シエラ・モレナの山中で道に迷った若者は、打ち捨てられた古宿で美しい乙女達の間で眠りにつき醜悪な死者達の間で目覚めたのでした。-母方の従姉妹と名乗る二人の美女、伝説の盗賊、カバラ学者、ジプシー達…次々と若者の前に現れる人々は誰もが自らの身の上を語ります。その物語の中の人物がまた自らの身の上を語り、また次の…入れ子状の物語の迷宮は、枝分かれた洞窟と暗い影を隠す若者が迷い込んだ険しい山そのもの。生者と死者、愛と疑惑、魔法と秘密…この迷宮を出る鍵は従姉妹が語り彼もその血を引くという、ゴメレス一族の謎にありそうです2023/06/12