講談社学術文庫<br> 役人の生理学

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講談社学術文庫
役人の生理学

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  • サイズ 文庫判/ページ数 240p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062922067
  • NDC分類 954
  • Cコード C0122

出版社内容情報

「生きるために俸給を必要とし、自分の職場を離れる自由を持たず、書類作り以外なんの能力もない人間」を洞察した大文豪のエッセイ。一九世紀の半ば頃、パリの書店は、「生理学」ものと呼ばれれる小冊子で溢れかえっていました。それは、扱う主題はさまざまで、風刺に満ちた出鱈目を書いたもので、青か黄の表紙がついており、読者を笑わせることを目的とした娯楽本でした。革命後、ジャーナリズムが勃興したフランスで一気にブレイクしました。現代の「スーパー・エッセイ」のたぐいでしょうか。
しかしその観察眼にはなかなか唸らせられます。
冒頭に定義があります。
「役人とは生きるために俸給を必要とし、自分の職場を離れる自由を持たず、書類作り以外なんの能力もない人間」
現在と同じではありませんか!
能なし役人とは「郊外に一戸建てを借りて住んでいる。中背、小太りで、ゆっくりと歩き、官吏であることを誇りにしている。どんな場合でも、体制に奉仕することに心血を注ぎ、政治音痴を自慢にしている。……『ジュルナル・デ・デバ紙』の意見をそのまま採用し、どんな権力であろうと、かならず権力の味方をする。」
この後、産業革命が起こり、金融資本が勢力を拡大してくると、民間企業で働く「サラリーマン」が誕生してくる。役人のようなライフスタイルが市民の間に広がっていくのである。『役人の生理学』で戯画化された人々は、現代のサラリーマンの原型なのです。
役人・会社員というのは、進歩していないことに驚かされます。
大文豪による抱腹絶倒のエッセイです。
付録に、一九世紀の役人文学3篇を追加。

学術文庫版まえがき
第一部 役人の生理学
第一章 定義
第二章 役人の有用性の証明
第三章 役人の哲学的・超越的歴史
第四章 区 別
第五章 役 所
第六章 いくつかの幻想的な存在について
第七章 試 補
第八章 召 喚
第九章 書記のさまざまな変種
第十章 要約
第十一章 課 長
第十二章 局 長
第十三章 給 仕
第十四章 退職者
「役人の生理学」の教訓
II 付録 役人文学アンソロジー
1 バルザック『役人』??概要と抜粋
2 フロベール『博物学の一講義』
3 モーパッサン『役人』
訳者解説
文庫版あとがき


バルザック[バルザック]
著・文・その他

鹿島 茂[カシマ シゲル]
解説/翻訳

内容説明

十九世紀、官僚組織の発生時に、大文豪が看破した役人の不変の生理とは?付録としてバルザック、モーパッサン、フロベールの「役人文学」も追加!

目次

役人の生理学(定義;役人の有用性の証明;役人の哲学的・超越的歴史;区別;役所 ほか)
付録 役人文学アンソロジー(バルザック『役人』(概要と抜粋)
フロベール『博物学の一講義・書記属』
モーパッサン『役人』)

著者等紹介

バルザック,オノレ・ド[バルザック,オノレド] [Balzac,Honor´e de]
1799‐1850年。フランスの小説家。代表作に『ゴリオ爺さん』ほか多数の“人間喜劇”と呼ばれる作品群を書いた

鹿島茂[カシマシゲル]
1949年生まれ。東京大学仏文科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程修了。現在、明治大学教授。19世紀フランスの社会・小説が専門(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

87
バルザックがこのようなものを書いていたとは驚きです。役人というよりも一般的なビジネスマンにも通じるような感じで読んでいて笑いが自然にでてきてしまいます。バルザックは風流滑稽譚を書いていますが、これはサラリーマン滑稽譚だという気がしました。新入社員全員に読ませたらどうでしょうか?これとウェーバーの「官僚制」は必読書になりそうな感じです。2015/10/09

魚京童!

18
バルザックは面白い。実は悲惨な公務員(https://bookmeter.com/books/520077)とかはこれをまねようとして大失敗したのだと思う。哀れなものだ。力量を知らないというのは怖ろしいことだ。しょうがないよね。バルザックだもん。風刺がしっかり効いている。こういう本大事だよね。いまそういう気分じゃないのが残念なんだけど。2020/01/19

千住林太郎

7
生理学と題する本であるが、しごくユーモアと皮肉にあふれた役人生活の実態を描いた本である。役人という職業のあり方が今日ではサラリーマンに広く見られる働き方であることに著者の観察眼の鋭さを称えずにはいられない。同時収録されているモーパッサンの『役人』もまた、役人生活を経験したモーパッサンの嘆きが行間から表れている。 官僚制とサラリーマンを考えるうえで欠かせない本だろう。2023/03/16

まると

7
確か昨年の新聞の書評欄で見た本。ひたすら役人をこき下ろし続ける内容に、これは何なのかと思っていたら、こういう類いの「生理学もの」が当時は随分とはやったのだと解説で知り、何のために書かれたのかがようやく理解できた。「すべての人に仕えるということは誰にも仕えないというに等しい」。確かに官僚組織の本質を見抜いた言葉に違いないが、今の日本の官僚に当てはめるとなると、ここまで言ってしまってはちょっとかわいそう。2019/02/12

さきん

7
さすがバルザックの人間観察は深い。全員がそうだというわけではないことは頭に入れて読まなくてはいけない。役人になる以上、かような職業病はしょうがないところがある。2015/07/13

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