出版社内容情報
仏教伝来、都城の整備、儒教の受容…。日本の国家のかたちや精神風土は、飛鳥時代に生まれた。その地の声を聞き、人々の思いを感じよう。
内容説明
六~七世紀の飛鳥時代は危機と動乱の時代であった。仏教伝来、蘇我氏の台頭と聖徳太子の理想、斉明女帝の大公共工事、大化改新、壬申の乱、そして平城京遷都…。飛鳥を散策すれば、当時の人々の息吹を感じとることができる。現代に生きる私たちとの「近さ」に驚くことだろう。蘇我氏や息長氏などの豪族の足跡、道教や神まつりの痕跡、都城、寺院や古墳などを訪ね、76の章で日本の原風景である古代飛鳥へ読者をいざなう。
目次
1 飛鳥とは
2 素顔の蘇我氏
3 聖徳太子と推古天皇
4 舒明天皇と息長氏
5 大化の政変
6 斉明天皇と水の祭祀
7 壬申の乱
8 持統天皇と藤原京
9 古寺をめぐる
10 墳墓と遺跡
著者等紹介
千田稔[センダミノル]
1942(昭和17)年、奈良県生まれ。京都大学卒業、同大学大学院文学研究科博士課程を経て追手門学院大学、奈良女子大学、国際日本文化研究センターで教授等を歴任。現在、奈良県立図書情報館長。博士(文学・京都大学)。歴史地理学的視点から歴史文化論を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
58
甘樫の丘、飛鳥寺、石舞台、高松塚古墳。飛鳥やその近辺の各地を巡った紀行文集。紀行文というより著者の考えを綴った随筆という趣が強いようにも思える。一つ一つの場所に割く頁数が少ないためか込められた情報量が多い為か、それぞれの場所を詳しく知るにはちょっと物足りない。それでもここに書かれている地名や人名、写真などを見ていると、かつて何度となく訪れた飛鳥の地が目の前に蘇ってくるよう。ここの写真を見ても単なる田舎なはずなのに、それでも訪れてみると淡々とした古代の風が吹いてくるよう。これが地霊ってものなのでしょうか。2016/05/15
Shoji
46
奈良県の桜井市、橿原市、明日香村といった、今の日本の創造の中心地の歴史について叙述しています。決して観光案内ではありません。飛鳥時代や奈良時代の歴史を多少なりとも学んだ方向けの本のようです。ゆえに、楽しめる方と、こ難しく感じる方と両極端だろうなと思いました。2019/09/30
紫羊
29
飛鳥には何度も足を運びましたが、いつもハイキング気分で、古代の歴史について思い巡らせることもなく。次回はこの本を片手に出かけてみよう。これまでとは違った風景が見えてくるかもしれない。2017/12/20
よしみん
14
私の「飛鳥」のイメージは、万葉集によるところが大きい。しかし、実際の飛鳥は禍々しい神がいて、血なまぐさい権力闘争が繰り広げられた場所でもあった。本書は、飛鳥に残る歴史の痕跡に、資料を引きながら解説を加えている。古代と近現代は、外国からの文化を受け入れた時代としては近いものがあるが、それに精神性を伴っていたかという点が大きく違うという。仏教で国を守る鎮護国家という考えは現代では失われているが、神仏はこの頃から日本人の精神に根付いているのだなと思った。大和三山や三輪山に囲まれた飛鳥をまた歩きたくなった。2016/05/31
chang_ume
12
新聞連載をまとめたもの。歴史地理学の立場からだろうか、地名由来の話題が頻出しますが正直こじつけ的な内容も多くあまり参考にならない。その他、飛鳥地域の直線古道(下ツ道など)を推古朝の「都城」計画の痕跡と見るなど、独自解釈もゆるく示されますがこれもまあいかがなものかと。古墳被葬者論を「邪道」と言い切るなど、現代の研究水準からはやや距離を置いた方なので、そういった味わいを好む読者、さらには重度の中公新書コレクターならどうぞという感じです。2022/07/21