心理学というと、最近は脳科学などと結びついたり、様々な実験や、瞑想などの手法が産まれたり、かなり変化が早い分野ではないかと思います。
その変化のスピードからすると、1981年に書かれた本書はそれだけで価値がない内容になりそうな気がします。
しかし、本書にはまだまだ賞味期限がたっぷりあるのではないかと思います。
というのは、現在いわれている新型うつや、やる気のなさなど、今の社会にある病理を言い当てている箇所が多いからです。すでにこの時代からその徴候を指摘し、その病理の軽重をしっかりと語っているところなどは現在でも参考になります。
また、心理学の流れや、各著明な心理学者の傾向なども触れているので、心理学全体を眺めるのにもちょうど良かったように思います。
そして何より文章が分かりやすいのがよかったです。語っているような文章でありながら、その端々にエレガントさを感じるところが気に入っています。
1981年に書かれたものが現代にも通じる、これは名著ではないかと思う所以であります。
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不安の病理 (岩波新書 黄版 157) 新書 – 1981/5/20
笠原 嘉
(著)
- 本の長さ216ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1981/5/20
- ISBN-104004201578
- ISBN-13978-4004201571
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1981/5/20)
- 発売日 : 1981/5/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 216ページ
- ISBN-10 : 4004201578
- ISBN-13 : 978-4004201571
- Amazon 売れ筋ランキング: - 358,179位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,666位岩波新書
- - 17,994位医学・薬学・看護学・歯科学
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上位レビュー、対象国: 日本
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2018年7月6日に日本でレビュー済み
精神医学の大家が語る不安の病理。
いわゆる病態水準などをかみ砕いて説明し、不安と精神的な疾患の間、古典的な精神分析とそれを活かした現在の理論の間を地続きで説明している印象。分かりやすく読みやすい。
何より驚いたのは81年に書かれたこの本の中で既に精神疾患の軽症化が言われている点。これは驚いた。
いわゆる病態水準などをかみ砕いて説明し、不安と精神的な疾患の間、古典的な精神分析とそれを活かした現在の理論の間を地続きで説明している印象。分かりやすく読みやすい。
何より驚いたのは81年に書かれたこの本の中で既に精神疾患の軽症化が言われている点。これは驚いた。
2018年2月18日に日本でレビュー済み
‘不安’という概念について、精神病理学や多文化精神医学的観点から解説したよい本だと思います。
実存の抱える根源不安は、実存哲学者キェルケゴールあたりも早くから問題にしましたが、
その精神内界における振る舞いは、いわば人生そのものともかかわるモチーフでしょう。
古語でも「心もとなし」といえば、気がかりを伴うある種の不安感を代弁していますし、
英語でもanxietyとかrestlessnessといえば、helplessnessとは対照的でしょう。
つまり、不安は恐怖や驚愕、また絶望などとはまったく異なる射程にあると了見されるコア病理なのであり、
未病のように漠然と予感めいたものから、不安神経症に発展しかねない固執的な症候性のものまで、
種々のレベルがあるでしょうが、本書はそのあたりからを分かりやすくまとめてくれています。
近年不安概念の理解も変容してきており、その背景には、典型的な躁鬱や双極Ⅱ型、統合失調など、
種々の精神病理の薬理学的解明がある程度進んできていることもあり、
その根底には、幾つかの指標的な神経伝達物質の分泌・局在過多や機能亢進(レセプタとの結合率増加、
即ち回転率の上昇も含めて)、逆に分泌・局在過少や機能低下(同じく結合率減少、
即ち回転率の低下も含めて)によって、精神状態の基調が興奮性に移ったり、
逆に抑制性に転じたりしていることがあるようです。
また不安という心的過程が個人の心的枠組みを超えて、広く一般に流布した場合には、
社会不安も増大し、それが時代の雰囲気を規定してゆくなどということもありうるでしょう。
思い返せば、歴史的にもそうしたことが多々大事件を惹起していたり、
はたまた科学的発見やパラダイム転換などを誘発していたりもします。
本書はその点、少し前の出版となりましたが、著者の従前からの着実な分析経験等に照らせば、
いわばその世界のsupervising guidelineとしても読めてくるのであり、
そこはひとつ1970~80年代頃の社会情勢をも振り返りつつ、本書をひもといてみれば、
あらたに映じてくる要素もあるかと推察されます。いわば「根源不安は人生を規定し、
性格をも形成する」といったスタンスでかかれている本書を、
そうした規定性や規定因子(デターミナント)に関心の向きに、とくにおすすめとしておきたく思います。
実存の抱える根源不安は、実存哲学者キェルケゴールあたりも早くから問題にしましたが、
その精神内界における振る舞いは、いわば人生そのものともかかわるモチーフでしょう。
古語でも「心もとなし」といえば、気がかりを伴うある種の不安感を代弁していますし、
英語でもanxietyとかrestlessnessといえば、helplessnessとは対照的でしょう。
つまり、不安は恐怖や驚愕、また絶望などとはまったく異なる射程にあると了見されるコア病理なのであり、
未病のように漠然と予感めいたものから、不安神経症に発展しかねない固執的な症候性のものまで、
種々のレベルがあるでしょうが、本書はそのあたりからを分かりやすくまとめてくれています。
近年不安概念の理解も変容してきており、その背景には、典型的な躁鬱や双極Ⅱ型、統合失調など、
種々の精神病理の薬理学的解明がある程度進んできていることもあり、
その根底には、幾つかの指標的な神経伝達物質の分泌・局在過多や機能亢進(レセプタとの結合率増加、
即ち回転率の上昇も含めて)、逆に分泌・局在過少や機能低下(同じく結合率減少、
即ち回転率の低下も含めて)によって、精神状態の基調が興奮性に移ったり、
逆に抑制性に転じたりしていることがあるようです。
また不安という心的過程が個人の心的枠組みを超えて、広く一般に流布した場合には、
社会不安も増大し、それが時代の雰囲気を規定してゆくなどということもありうるでしょう。
思い返せば、歴史的にもそうしたことが多々大事件を惹起していたり、
はたまた科学的発見やパラダイム転換などを誘発していたりもします。
本書はその点、少し前の出版となりましたが、著者の従前からの着実な分析経験等に照らせば、
いわばその世界のsupervising guidelineとしても読めてくるのであり、
そこはひとつ1970~80年代頃の社会情勢をも振り返りつつ、本書をひもといてみれば、
あらたに映じてくる要素もあるかと推察されます。いわば「根源不安は人生を規定し、
性格をも形成する」といったスタンスでかかれている本書を、
そうした規定性や規定因子(デターミナント)に関心の向きに、とくにおすすめとしておきたく思います。