題名が内容をそのまま言い表しているのだが、C.ストリンガー(古人類学)とC.ギャンブル(旧石器考古学)が最新の研究により、ネアンデルタール人を再評価したもの。ご存知の方も多いだろうが、人類の進化には(アフリカ東海岸近くを発祥とする)単一起源説と多地域進化説の2つの説がある。現在では単一起源説が圧倒的に優勢だが、本作発表当時はまだ決定打が出ていなかったのだ。ちなみに、多地域進化説とは例えばジャワ原人が現在の東アジア人の祖先であり、ネアンデルタール人が現在のヨーロッパ人の祖先であるという風に、地域ごとに人類が進化したという説である。ストリンガーは単一起源説の急先鋒として知られていた。
私などが小さい頃習った時は、ネアンデルタール人は毛むくじゃらで、棍棒を持った、猫背の野蛮人として描かれていた。それを覆したのはA.ソレッキの「シャニダール洞窟の謎」である。その本では、シャニダール洞窟の発掘の結果、ネアンデルタール人は障害児の世話をしたり、死者を花と共に埋葬する等、人間味溢れるエピソードが書かれている。これにより、ネアンデルタール人のイメージが変わり、現代人の祖先と考えてもおかしくないのではという風潮が起こっていた。
本書はその見方を真っ向から否定するものである。まず、最新の年代制定技術を用いボルド石器型式学を完膚なきまで否定し「ネアンデルタール人=中部旧石器」という時代考証を打ち砕く。また、骨の分析から、ネアンデルタール人には埋葬の習慣などなかったと断言し、花粉は撹乱による後世の混入とアッサリ片付けている。また、遺構の調査から、ネアンデルタール人が小屋を作ったという説は信憑性がないと論じる。
ネアンデルタール人には少し厳しすぎる論という気もするが、その後の研究で"単一起源説"が動かし難いものとなると、やはりネアンデルタール人は歴史の途中で消えてしまった悲劇の"原人類"ということになるのであろう。しかし、ネアンデルタール人程、多くの遺構・人骨等が残っている原人類もいないのであるから、詳細な真のネアンデルタール人像を見てみたいと思う。
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ネアンデルタール人とは誰か (朝日選書 576) 単行本 – 1997/4/1
- 本の長さ396ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日1997/4/1
- ISBN-104022596767
- ISBN-13978-4022596765
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ネアンデルタール人、彼らは我々の祖先か、否か。化石から得られた解剖学的資料から最近の遺伝学のデータにまで及ぶ生物学上の証拠、そして考古記録に含まれる過去の生活様式の記録より探る。
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (1997/4/1)
- 発売日 : 1997/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 396ページ
- ISBN-10 : 4022596767
- ISBN-13 : 978-4022596765
- Amazon 売れ筋ランキング: - 670,991位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 527位考古学 (本)
- - 36,227位科学・テクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
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2017年5月28日に日本でレビュー済み
かつてのストリンガーとギャンブルの名著の英訳です。
が、しかし、邦訳に当たりタイトルが意訳されというより「異訳」されています…
また、原著にある参考文献や註が十分に邦訳、掲載されていません…
明らかな原典改変とも理解できます…
念のため、原著と邦訳を対照させて読んでみました。
意訳は良いのですが、明らかな異訳が見受けられました…
著者は新聞社勤務で英語に堪能なようですが、
翻訳者としての実績や経歴は不明です…
また、考古学、人類学を高等教育で勉強された方
でもありませんでした…
以上の理由から、
果たして、
この著作が原点の邦訳に該当するか、
甚だ疑問です…
原典の内容が明確に改変されているからです…
以上の問題からこの評価です…
もし、この著作を引用する際は
その内容の精度や性格について、
くれぐれもご注意ください。
が、しかし、邦訳に当たりタイトルが意訳されというより「異訳」されています…
また、原著にある参考文献や註が十分に邦訳、掲載されていません…
明らかな原典改変とも理解できます…
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意訳は良いのですが、明らかな異訳が見受けられました…
著者は新聞社勤務で英語に堪能なようですが、
翻訳者としての実績や経歴は不明です…
また、考古学、人類学を高等教育で勉強された方
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甚だ疑問です…
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