国際政治学、東アジアの国際関係を専門にする著者が「あまりにも急速に米中対立が進展するなかで、学生や市民から何が起きているのか知りたいという声を聞くたびに、自らの研究者としての社会的な責任を考えるように(p.281)」なり著した書だという。
著者によれば、
1 アメリカの対中政策は「国交正常化から二〇一〇年代まで四十年近くの間……主流の考え方が関与と支援で(p.28)」あり、それが「中国を育てた(p.ii)」。
2 「ソ連を牽制するという戦略的な理由(p.iii)」が消滅したあとでも、「中国への三つの期待(p.19)」、すなわち中国が「市場化改革」「政治改革」「国際社会への貢献(p.18)」をすすめるであろうという期待と、「中国の力に追いつかれないとの慢心(p.19)」がその対中政策を支えた。
3 しかし、期待は実現されず、中国の軍事力・経済力がアメリカのそれに近づいてくるにつれ、米国内での不信と恐れが高まってきて、「オバマ政権末期からトランプ政権期、また習近平政権登場後(p.22)」に転換点を迎え、アメリカは急速に対中政策を変えて現在に至る。
4 このような米中の対立関係は、そう簡単には改善されず、長期化するだろう。
5 その状況下で、日本は「パワー(力)と価値観の二つをともに成り立たせたところに外交を構想する(p.276)」べきだ。
ということになる。
第1章~第4章は、1970年代以降のアメリカの対中政策をほぼ時系列で追い、第5章では、そのような対中政策が米国内のどのようなアクターによって生み出されてきたかを分析し、第6章では、アメリカの対中政策への他国のまなざしや他国の対中政策を取りあげ、第7章の「今後の展望」に至る。
「対中政策の変更は、トランプによる特異的なものではなく、オバマ政権の頃からすでに始まっていたのだ」ということなど、多くの気づきが得られた。
残念なのは、
1 第6章で「ヨーロッパ」「インド太平洋」「台湾」が取りあげられていながら、アメリカの対中政策に日本がどう反応してきたのかの叙述がないこと。
2 (やむを得ないことだが)過去から現在までの分析が緻密かつ具体的なのに対して、抽象度の高い「展望」になっていること。
時々、文意が取りにくいが、イライラするほどではない。
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米中対立-アメリカの戦略転換と分断される世界 (中公新書 2650) 新書 – 2021/7/19
佐橋 亮
(著)
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「中国は唯一の競争相手」――現職のアメリカ大統領がこう明言するように、近年、米中の対立は激化する一方である。貿易戦争、科学技術の流出と開発競争、香港・台湾問題……。米国の対中姿勢は関与・支援から対立へとなぜ変わったのか。大統領や国家主席が誰であれ、今後も対立が続くのか。一九七〇年代の国交回復から現在に至る米中関係をたどり、分断されていく世界のなかで、日本のとるべき針路を考える。
- 本の長さ308ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2021/7/19
- 寸法11.1 x 1.3 x 17.4 cm
- ISBN-104121026500
- ISBN-13978-4121026507
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商品の説明
著者について
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所准教授。1978年(昭和53年)、東京都に生まれる。イリノイ大学政治学科留学を経て、国際基督教大学卒業。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。オーストラリア国立大学博士研究員、東京大学特任助教、神奈川大学准教授・教授などを経て現職。専攻、国際政治学、とくにアメリカと東アジア、米中関係、アジア太平洋の安全保障秩序と制度。著書『共存の模索 アメリカと「2つの中国」の冷戦史』など。
東京大学東洋文化研究所准教授。1978年(昭和53年)、東京都に生まれる。イリノイ大学政治学科留学を経て、国際基督教大学卒業。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。オーストラリア国立大学博士研究員、東京大学特任助教、神奈川大学准教授・教授などを経て現職。専攻、国際政治学、とくにアメリカと東アジア、米中関係、アジア太平洋の安全保障秩序と制度。著書『共存の模索 アメリカと「2つの中国」の冷戦史』など。
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2021/7/19)
- 発売日 : 2021/7/19
- 言語 : 日本語
- 新書 : 308ページ
- ISBN-10 : 4121026500
- ISBN-13 : 978-4121026507
- 寸法 : 11.1 x 1.3 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 129,454位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年7月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「なか見!検索」が出来ないので参考のため目次を記します。 「はしがき」に続いて
序章 米中対立とは何か
第一章 関与と支援
第二章 不確かなものへの恐怖
第三章 高まる違和感
第四章 関与政策の否定へ
第五章 アメリカのなかの中国
第六章 米中対立をみつめる世界
第七章 今後の展望
おわりに
理系の社会人です。歴史の本はよく読みますが政治・経済の本はほとんど読まないため本書は難しく感じました。一応1日半で読みましたが十分理解できたとは云えず再読が必要と感じてます。
本書は米中対立の経緯を安価な「新書」で教えてくれる有難い本です。
○「はしがき」は本書の内容を要約しており面白い。
○ 序章も懇切丁寧で面白い。特にp20の中国の名目GDP/米国の名目GDPのグラフが良い。確かにこのまま延長すると約10年後には米国に追いつく。(人口が多いので当然ですが)
○ 第一章の最初に簡単な年表があり本文を読む際役立つ。本文は人名が沢山出てくるのには閉口するが懇切丁寧で面白い。(次回読むときにはWiki等で調べた方が良い)
「三つの期待」:中国が政治体制を改善し、市場化に取り組み、先進国との関係強化に取り組む
○ 第二章~第四章も第一章と同じく最初に簡単な年表があり本文は懇切丁寧で面白い。人名が沢山出てくるのも同じ
○ 残念なのは第五章~第七章 教科書的で所謂面白い本ではない。良く云えばLevelが高い。
○ 巻末に索引が付いているのは有難い。しかし、上記「三つの期待」が抜けている等完全ではない。
あとがきに「学術書」とあります。巻末には参考文献が16頁に渡って記載されてます。それでLevelの高い理由が分りました。文系大学生向けの本と思われます。「〇〇新書」は高校生、専門外の大学生、一般社会人のための啓蒙書ですので参考文献の代わりに簡単な用語集(人名、事項)にしてくれたらWikiで調べる必要がなく一層分り易い本になったと思われます。
序章 米中対立とは何か
第一章 関与と支援
第二章 不確かなものへの恐怖
第三章 高まる違和感
第四章 関与政策の否定へ
第五章 アメリカのなかの中国
第六章 米中対立をみつめる世界
第七章 今後の展望
おわりに
理系の社会人です。歴史の本はよく読みますが政治・経済の本はほとんど読まないため本書は難しく感じました。一応1日半で読みましたが十分理解できたとは云えず再読が必要と感じてます。
本書は米中対立の経緯を安価な「新書」で教えてくれる有難い本です。
○「はしがき」は本書の内容を要約しており面白い。
○ 序章も懇切丁寧で面白い。特にp20の中国の名目GDP/米国の名目GDPのグラフが良い。確かにこのまま延長すると約10年後には米国に追いつく。(人口が多いので当然ですが)
○ 第一章の最初に簡単な年表があり本文を読む際役立つ。本文は人名が沢山出てくるのには閉口するが懇切丁寧で面白い。(次回読むときにはWiki等で調べた方が良い)
「三つの期待」:中国が政治体制を改善し、市場化に取り組み、先進国との関係強化に取り組む
○ 第二章~第四章も第一章と同じく最初に簡単な年表があり本文は懇切丁寧で面白い。人名が沢山出てくるのも同じ
○ 残念なのは第五章~第七章 教科書的で所謂面白い本ではない。良く云えばLevelが高い。
○ 巻末に索引が付いているのは有難い。しかし、上記「三つの期待」が抜けている等完全ではない。
あとがきに「学術書」とあります。巻末には参考文献が16頁に渡って記載されてます。それでLevelの高い理由が分りました。文系大学生向けの本と思われます。「〇〇新書」は高校生、専門外の大学生、一般社会人のための啓蒙書ですので参考文献の代わりに簡単な用語集(人名、事項)にしてくれたらWikiで調べる必要がなく一層分り易い本になったと思われます。
2021年10月25日に日本でレビュー済み
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米中関係を、主として米国側の公式文書に基づいて紐解いている。三百件以上の参考文献が巻末に記載されており、国際関係の学術発表はこのように証拠となる文書に基づいて厳密に展開しなければいけないのかと、感心させられる。私のように学界発表を読みたかった訳ではない読者にとっては、森を見たかったのに木を沢山見た感もあるが、主観で捻じ曲げられていない客観的な論旨を学べる信頼感があった。私のような素人向けには、章ごとに最初と最後にまとめがあって助かった。
専制主義と民主主義では能率に差があることは承知していたが、本書を読んで、折衝の巧拙にも差があることを感じた。国益に関して中国は、米国より一枚上手で、日本より二三枚上手であることを痛感した。
専制主義と民主主義では能率に差があることは承知していたが、本書を読んで、折衝の巧拙にも差があることを感じた。国益に関して中国は、米国より一枚上手で、日本より二三枚上手であることを痛感した。
2021年8月15日に日本でレビュー済み
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米中関係50年史である。1979年の米中国交正常化に始まっている。
トランプ以後を現在とすると、分量的に、過去、現在、未来の比率は2対2対1程度である。
私的感想
〇先行レビューが並んでいて、皆さん良いことを書いておられる。全面賛成するわけではないが、本書を読む上で参考になった。
〇アメリカから見た米中関係史であり、中国から見た中米関係はほとんどないこと、ロシアにふれていないこと、過去の報道のまとめ的な内容であること、予測が慎重すぎることなどは、すでに先行レビューに書かれている。
〇しかし、私はこういう観点からの本を余り読んだことがなく、時事テーマを熱心に追っている方ではないので、本書はなかなか勉強になった。要するに、2010年代の半ば以後、アメリカの中国専門家は中国に期待しなくなったということですね。
〇劇場型の文章ではないが、読みやすい文章で、理解しやすかった。
〇「今後の展望」については、なかなか説得力があるように思った。
トランプ以後を現在とすると、分量的に、過去、現在、未来の比率は2対2対1程度である。
私的感想
〇先行レビューが並んでいて、皆さん良いことを書いておられる。全面賛成するわけではないが、本書を読む上で参考になった。
〇アメリカから見た米中関係史であり、中国から見た中米関係はほとんどないこと、ロシアにふれていないこと、過去の報道のまとめ的な内容であること、予測が慎重すぎることなどは、すでに先行レビューに書かれている。
〇しかし、私はこういう観点からの本を余り読んだことがなく、時事テーマを熱心に追っている方ではないので、本書はなかなか勉強になった。要するに、2010年代の半ば以後、アメリカの中国専門家は中国に期待しなくなったということですね。
〇劇場型の文章ではないが、読みやすい文章で、理解しやすかった。
〇「今後の展望」については、なかなか説得力があるように思った。
2021年11月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分の知識の為。関与政策に反対する人たちのスタンスの詳細が欲しかった。
2021年9月24日に日本でレビュー済み
本書は⽶中関係を専⾨とする気鋭の専⾨家によって執筆された⼀冊である。著者は 2015 年
に博⼠論⽂をもとに執筆した『共存の模索』の中で、「信頼性と安定の均衡の追求」という
視点を設定して、冷戦初期からニクソン政権期までの⽶中関係を読み解いている。続く本書
『⽶中対⽴』は⽶中国交正常化の時期を始点に現代のバイデン政権までを視野に収めた、⽶
中関係の学術書としての続編であるとあとがきにも記されている。それを貫く視座こそが、
中国が政治改⾰・市場化改⾰を⾏い、既存の国際秩序を受け⼊れ然るべき役割を果たすとい
う「三つの期待」だ。しかし、ニクソンがかつて回顧したように「フランケンシュタイン」
とも思われるほど強⼤化した中国を前にアメリカは戦略転換を果たし、バイデン政権の「国
家安全保障戦略」暫定指針では中国が「唯⼀の競争相⼿」に位置づけられた。
本書の優れた点は、(撞着語法に感じられるかもしれないが)⼀貫した広い視点、とでも評
するべき著者の透徹とした筆致である。⽶中関係の変動が「三つの期待」を軸に論じられて
いると上述したが、その視点は⽶中という⼆国間関係にも注がれれば、⽶国内政治も⾒落と
さず(第 5 章)、かといって⽶中対⽴を国際政治全体の構図に落とし込む努⼒(第 6 章)も
惜しまない。さらに、⼒(パワー)か価値観のどちらか⼀⽅のみに終始して議論することの
ない「三つの期待」という軸を設定したからこそ、読者も腰を据えて全体図を眺望すること
ができるのであり、⽇本外交には(パワーと価値観の)連⽴⽅程式の発想が必要だという
「おわりに」の展望にも⽂⾯以上の説得⼒がある。複雑化しながら⽩熱する⽶中対⽴を読み
解くためには、著者のような冷徹な分析こそが必要とされるのだろう。
本書は初学者にはもちろん、⽶中関係について⼀定の知識を持つものも⼰の知識・思考を整
理する好機を提供しており、⼀般向けに書かれた新書としての価値が⾼い。他⽅で、出典や
固有名詞も明確であり、かつ末尾には主要参考⽂献もまとめられていて、⼗分な学術的価値
も有していると⾔えるだろう。
に博⼠論⽂をもとに執筆した『共存の模索』の中で、「信頼性と安定の均衡の追求」という
視点を設定して、冷戦初期からニクソン政権期までの⽶中関係を読み解いている。続く本書
『⽶中対⽴』は⽶中国交正常化の時期を始点に現代のバイデン政権までを視野に収めた、⽶
中関係の学術書としての続編であるとあとがきにも記されている。それを貫く視座こそが、
中国が政治改⾰・市場化改⾰を⾏い、既存の国際秩序を受け⼊れ然るべき役割を果たすとい
う「三つの期待」だ。しかし、ニクソンがかつて回顧したように「フランケンシュタイン」
とも思われるほど強⼤化した中国を前にアメリカは戦略転換を果たし、バイデン政権の「国
家安全保障戦略」暫定指針では中国が「唯⼀の競争相⼿」に位置づけられた。
本書の優れた点は、(撞着語法に感じられるかもしれないが)⼀貫した広い視点、とでも評
するべき著者の透徹とした筆致である。⽶中関係の変動が「三つの期待」を軸に論じられて
いると上述したが、その視点は⽶中という⼆国間関係にも注がれれば、⽶国内政治も⾒落と
さず(第 5 章)、かといって⽶中対⽴を国際政治全体の構図に落とし込む努⼒(第 6 章)も
惜しまない。さらに、⼒(パワー)か価値観のどちらか⼀⽅のみに終始して議論することの
ない「三つの期待」という軸を設定したからこそ、読者も腰を据えて全体図を眺望すること
ができるのであり、⽇本外交には(パワーと価値観の)連⽴⽅程式の発想が必要だという
「おわりに」の展望にも⽂⾯以上の説得⼒がある。複雑化しながら⽩熱する⽶中対⽴を読み
解くためには、著者のような冷徹な分析こそが必要とされるのだろう。
本書は初学者にはもちろん、⽶中関係について⼀定の知識を持つものも⼰の知識・思考を整
理する好機を提供しており、⼀般向けに書かれた新書としての価値が⾼い。他⽅で、出典や
固有名詞も明確であり、かつ末尾には主要参考⽂献もまとめられていて、⼗分な学術的価値
も有していると⾔えるだろう。
2021年9月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者はまだ若い研究途上の准教授だが、前著の後、続編を学術論文としてまとめる予定で研究を進めていたが、米中関係をどう見たらよいのかという要望が強く、急遽、この新書版を書いた様だ。一定の下地があり、学術書はまだ先になるので、この要望にこたえる意味で書かれており、ある程度現在に近いところまでの約50年間の米中関係が、一般者向けに書かれている。また、あとがきにあるが、ずいぶんたくさんの教授に読んでもらい、指導と助言をもらって、この本は出来上がっている。
時は、キッシンジャーが日本の頭越しに米中の国交正常化を始め、1979年の米中の国交正常化がなった。そして、鄧小平は同じ年に改革開放路線(南巡講話)で市場経済に舵を切ったところから始まる。ここで、アメリカは大きな国・中国の変容に期待をかけて行く。大きな市場であり、大きな安い賃金の労働者と工場をつくり、そういう過程を通じて価値観や政治体制も徐々に変わってくるだろうという楽観的な「関与政策」が2010頃まで、紆余曲折はあるが、一貫したアメリカの基本姿勢が続いていたことが記述されている。武器の売却や経済援助なども果敢にされている。
しかし、中国は急速に成長し、日本を抜いて世界第二位の経済大国になった。ここまでは、ある意味、ウインウインの関係と見做され続けている。しかし、中国はアメリカの予想をはるかに超えて、アメリカを脅かす先端技術や大企業を作り上げ、次第にアメリカは脅威を感じ始める。当然、経済が発展すれば大きな影響力を持ち、軍事力も大きくなっていく。しかし、アメリカが思惑として持っていた政治の民主化、自由化は進まず、だんだんと覇権国家的になって行く。オバマの後半から其れは警戒意識に変わり始め、アメリカに次ぐ大国として、世界秩序を作っていく存在から、米中大国関係になり、トランプからバイデンに至って、相当な脅威を感じる存在になってきて、大きく「関与政策」が見直され、戦略的な米中対立関係に突入していく。また、そういう認識に変わりつつあり、新たな冷戦、敵対関係に入るのか、米中の大国どおしの大人の関係が再度つくり上げられるか、微妙な時点に立ち至っている。
ただ、中国はかなり覇権主義的な傾向を見せており、つばぜり合いが起こっており、台湾や一帯一路構想での警戒感と勢力争いが始まっている。
おおよそ、こういう内容を軸にして、タイムリーに分析してくれた学者による分析書であり、ある現象だけを取り出して、うんぬんかんぬんする本が多いが、其れとは異なるトータルに見た米中関係の変遷を、冷静に、かつ分かり易く描き出してくれている。
一つの纏まった論考として、大いに参考になる書である。
時は、キッシンジャーが日本の頭越しに米中の国交正常化を始め、1979年の米中の国交正常化がなった。そして、鄧小平は同じ年に改革開放路線(南巡講話)で市場経済に舵を切ったところから始まる。ここで、アメリカは大きな国・中国の変容に期待をかけて行く。大きな市場であり、大きな安い賃金の労働者と工場をつくり、そういう過程を通じて価値観や政治体制も徐々に変わってくるだろうという楽観的な「関与政策」が2010頃まで、紆余曲折はあるが、一貫したアメリカの基本姿勢が続いていたことが記述されている。武器の売却や経済援助なども果敢にされている。
しかし、中国は急速に成長し、日本を抜いて世界第二位の経済大国になった。ここまでは、ある意味、ウインウインの関係と見做され続けている。しかし、中国はアメリカの予想をはるかに超えて、アメリカを脅かす先端技術や大企業を作り上げ、次第にアメリカは脅威を感じ始める。当然、経済が発展すれば大きな影響力を持ち、軍事力も大きくなっていく。しかし、アメリカが思惑として持っていた政治の民主化、自由化は進まず、だんだんと覇権国家的になって行く。オバマの後半から其れは警戒意識に変わり始め、アメリカに次ぐ大国として、世界秩序を作っていく存在から、米中大国関係になり、トランプからバイデンに至って、相当な脅威を感じる存在になってきて、大きく「関与政策」が見直され、戦略的な米中対立関係に突入していく。また、そういう認識に変わりつつあり、新たな冷戦、敵対関係に入るのか、米中の大国どおしの大人の関係が再度つくり上げられるか、微妙な時点に立ち至っている。
ただ、中国はかなり覇権主義的な傾向を見せており、つばぜり合いが起こっており、台湾や一帯一路構想での警戒感と勢力争いが始まっている。
おおよそ、こういう内容を軸にして、タイムリーに分析してくれた学者による分析書であり、ある現象だけを取り出して、うんぬんかんぬんする本が多いが、其れとは異なるトータルに見た米中関係の変遷を、冷静に、かつ分かり易く描き出してくれている。
一つの纏まった論考として、大いに参考になる書である。