本書の購入動機は、本書の一番手に登場する東大卒のエンジニアである加藤百合子さんが、NASAのプロジェクトにも参加した経験があり、毎年数十億円の売り上げをたたき出すアルゴリズムを独自に開発したことに、非常に興味をそそられたからです。
また、加藤さんはいろいろ研究した後、嫁ぎ先の静岡県で「やさいバス」を起業して頑張っていることも知りたくて、本書を購入させていただきました。
本書の中で一番面白かったのは、やはり加藤さんが「やさいバス」で起業し、現在成功した過程が痛快でした。
本書を紹介する上で、本書で紹介されている10名の成功事例の中で、私がもっとも勉強になった加藤さんを例にあげ、本書を説明します。
加藤さんは、東京大学農学部でロボットアームの研究をした後、航宇宙工学やMBAで有名なイギリスのトップ校であるクランフィールド大学で「スプリンクラーロボット」を作りました。
わずか10カ月で修士号を取得後に、アメリカに渡り「宇宙ステーションで植物を生産する」NASAのプロジェクトメンバーになります。
結婚の為に日本に帰国し、キヤノンに入社したが、旦那さんの静岡の産業機械メーカーの研究職につきます。
出産後、育児をしながらわずか2年で、毎年数十億の売り上げを叩き出すアルゴリズムを独自に開発しました。
そして、2017年3月に『やさいバス』農業物流ベンチャーを立ち上げ、瞬く間にビジネスを確立しました。
『さやいバス』のサービス開始から4年経ち、静岡から始まったやさいバスの導入先は長野、茨城、神奈川、広島、千葉、愛知、高知にまで拡がり、自治体からの問い合わせは引きりなしです。
(2020年には農業つながりで関係を深めた自動車メーカースズキの社外取締役に就任している。)
以下は本誌をより読者に理解してもらうため、各項を私なりに工夫して、詳細に記載させていただきました。ご参考にしていただけましたら幸いです。
①エムスクエア・ラボ 加藤百合子
「やさいバス」は、産地を循環し、農産物の新しい物流を作り、本当の意味の地産地消と地域経済の活性化に貢献しています。
② ドロップファーム 三浦綾佳
特殊な製法を導入して、素人集団で高機能トマトを量産。圧倒的なマーケティングと営業力で直販し、1億円の売り上げを目指します。
③みやぎ農園 宮城盛彦、小田哲也
沖縄県で薬剤と無縁の養鶏法を考案する。地域の野菜農家にたい肥をシェアし、その野菜を買い取って卸売りも手掛けるのがみやぎ農園です。その耕畜連携の循環型農業をブータンに輸出しています。
④ムスカ 串間充崇
ソ連の火星探査計画から生まれた、家畜の排せつ物を食べ、飼料にも肥料にもなるスーパーイエバエ。これを使って食糧危機に立ち向かいます。
⑤ローズラボ 田中綾華
大学を中退して、食用バラ農家に就いたローズラボの田中綾華さん。バラを使った食品や化粧品を次々と開発し、就農から3年目にして売り上げが1億円を突破しました。
⑥ー葉っぴー Farm ダルマ・ラマー
ネパールで仏画師をしていたダルマ・ラマさん。日本人女性との結婚を機に来日し、縁あって富山県の小松菜農家を継承した。日本と母国をつなぐビジネスも始め、売り上げは継承前の2倍になりました。
⑦ 野口農園 野口憲一
民俗学者として大学で教鞭をとる野口憲一さん。実家の野口農園で作るレンコンに自信を持ち、1本5000円で発売する。今では国内外に顧客を持ち、売り上げは1億円を超えました。
⑧クラタペッパー 倉田浩伸
内戦直後、国際協力で現地に渡った倉田浩伸さん。かつて世界一と評された胡椒が内戦で絶滅寸前と知り、自ら畑を買い取って復活に尽力。お土産として活路を見出します。
⑨ 京都おぶぶ茶苑 松本靖治
年間1500人の外国人旅行者が参加する茶園ツーリズムを生み出した京都おぶぶ茶苑の松本靖治さん。茶畑オーナー制度などユニークなアイデアで、茶業界に新風を吹き込みます。
⑩ジャンマルク・ブリニョ
フランスで天才と称されたナチュラルワインの醸造家・ジャンマルク・ブリニョさん。佐渡島に移住し、これまでにない発想で新たなワイン造りに挑みます。
以下は、さらに本誌を理解してもらうため、各章を私なりに工夫して、もっと詳細に記載させていただきました。ご参考にしていただけましたら幸いです。
【目 次】
【はじめに】
・さまざまな境界を越えて
・日本の食卓を支える高齢者
・新規就農者の75・5%が「食っていけない」
・紡がれる未来 分野を越える
①エムスクエア・ラボ 加藤百合子
〜東大発NASA経由 やさいバスとロボットで「境界」を溶かす〜
・課題だらけの「おもちゃ箱」
・『沈黙の春』とドラえもん
・NASAから日本へ
・400人の生産者を取材して気づいたこと
・「流通をもっときれいに整えないと」
・第3の選択肢「やさいバス」
・4年目で7県800社に広がる
・企業内で新たなコミュニケーション
・運輸業界の巨人たちと手を組む
② ドロップファーム 三浦綾佳
〜すべては「境界を溶かす」ために 素人集団で売り上げ1億円超へ トマトで拡げるダイバーシティ〜
・「農業は女性に向いていると思うんですよ」
・アルバイトで天職に出会う
・「これは売れる!」と確信したトマト
・実績なしで4500万円の融資を得る
・自ら試食販売に立つ
・最新のICTでスタッフの雑務が激減
・「売れるかどうかじゃなくて、売る」
・大切なのは「キラキラしているか」
③みやぎ農園 宮城盛彦、小田哲也
〜技術で越える ブータンからのラブコール
養鶏から始まる「美しい村づくり」〜
・沖縄の養鶏家がなぜブータンへ?
・死にかけたヒヨコが蘇った理由
・「美しい村づくり」がスタート
・「動物が好きじゃない」のに農園入り
・10年で売り上げが約3・5倍に
・知恵と経験と発想力を試される
・ブータンで実感した日本が目指すべき道
④ムスカ 串間充崇
〜ロシア生まれのスーパーイエバエで食糧危機に立ち向かう〜
・肥料・飼料に革命が起こる!
・ハエの能力に一目ぼれして電力会社を退社
・社長をビジネスの師として
・新会社設立も、苦境に
・自治体・企業と手を組み実証実験を開始
・循環型社会を実現、人類の危機を救う
⑤ローズラボ 田中綾華
〜世代を越える 曾祖母の言葉を胸にバラ農家に 食用から多機能スプレーまで〜
・コロナ禍で挑んだ新商品開発
・「こんなに目を輝かせたことあったっけ?」
・幸せに生きる扉のカギ
・研修先で抱いた危機感
・3000万円を用意して起業
・地獄からの脱出
・バラ風呂に入りながら苦悩した日々
・「切り札」で化粧品に参入
・天才に勝つために3倍努力する
⑥ー葉っぴー Farm ダルマ・ラマー
〜小松菜農園を継いだネパール人仏画師が故郷でも新事業〜
・ビニールハウスと仏画
・周囲を巻き込み次々「社会貢献」
・就職すると笑われる?
・家族の反対を押し切って結婚
・ほとんど日本語を話せないまま就職
・仏画師復帰で動き出した人生
・用意されていたタイムカード
・「師匠」の歩み
・有名ホテルの総料理長が惚れた
・「小松菜の匠」が見初めた才能
・花があれば蜂がくる
・母国で始めたえごま生産事業
・日本で社会起業家になる
⑦ 野口農園 野口憲一
〜民俗学者が掘り起こした「1本5000円の蓮根」のニーズ〜
・たった3時間で完売
・「1本1万円で蓮根を売ってきなさい」
・母親の500万円を投じてブランディング
・「どん底」で鳴った電話
・社会学の名著を参考に
・超高級店に売り込みメール
・日本の逸品を世界に届ける
⑧クラタペッパー 倉田浩伸
〜国境を越える 「世界一おいしい」カンボジア胡椒を復活させた男〜
・秋篠宮殿下の言葉
・「人はなんのために生きるのか」
・終戦間もないカンボジアへ
・無償で学校に行ける環境を作るために
・大伯父から託された幻の資料
・内戦を生き抜いた老人と胡椒の木
・「お前は悪の商人だ」
・備品とともに社員が蒸発
・幸運の女神、現る
・ヨーロッパからの高い評価
・「コッコン州を除く」!?
・「結果が出るのは20~30年後」
⑨ 京都おぶぶ茶苑 松本靖治
〜海外からインターンと観光客が殺到する「お茶ツーリズム」〜
・外国人が次々対応
・「茶源郷」の異端児
・どん底からの「奇跡」が起きた日
・おぶぶ茶苑を変えたインターン
・地元でも認められる存在に
・ポテンシャル溢れる産地との出会い
・パンデミックの先の未来
⑩ ジャンマルク・ブリニョ
〜フランスの天才醸造家が佐渡島で挑む独創的なワイン造り〜
・古民家と畑とフランス人
・旧東独の映画学校へ
・ナチュラルワインの神様との出会い
・「天才醸造家」への道
・佐渡島移住を選んだ理由
・農地入手に「外国人」の壁
・「1aプロジェクト」始動
・「日本の大地の力はとても強い」
【おわりに】
【初出一覧】
以上。
レビューに最後までお付き合い下さりありがとうございます。本書は、農業ビジネスのアイデアが満載で、巻末までとても楽しく一気に読めました。
【まとめ】
本書は、未来の日本の農業を大成功に導いてくれる、一つのバイブルといえます。また他のビジネスにおいても大いにヒントを導いてくれる良書である。
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農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ (文春新書 1336) 新書 – 2021/10/20
川内 イオ
(著)
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購入オプションとあわせ買い
ネパール人仏画師、民俗学者、ロボットエンジニア、フランスから来た天才醸造家……国境、仕事の領域や農業界の常識など、いろんなボーダーを越えていく10人の物語です。
この本が、農業に携わる人たちのヒントや刺激になってほしい!
登場するネクストファーマーズを紹介!
静岡発:産地を循環する「やさいバス」で農産物の新しい物流を作り、本当の意味の地産地消と地域経済の活性化に挑むエムスクエアラボの加藤百合子さん。
茨城発:特殊な製法を導入して、素人集団で高機能トマトを量産。圧倒的なマーケティングと営業力で直販し、1億円の売り上げを目指すドロップファームの三浦綾佳さん。
沖縄発:薬剤と無縁の養鶏法を考案。地域の野菜農家にたい肥をシェアし、その野菜を買い取って卸売りも手掛けるみやぎ農園。その耕畜連携の循環型農業をブータンに輸出。
宮崎発:ソ連の火星探査計画から生まれた、家畜の排せつ物を食べ、飼料にも肥料にもなるスーパーイエバエ。これを使って食糧危機に立ち向かうムスカの串間充崇さん。
埼玉発:大学を中退して、食用バラ農家に就いたローズラボの田中綾華さん。バラを使った食品や化粧品を次々と開発し、就農から3年目にして売り上げが1億円を突破した。
富山発:ネパールで仏画師をしていたダルマ・ラマさん。日本人女性との結婚を機に来日し、縁あって富山の小松菜農家を継承。日本と母国をつなぐビジネスも始め、売り上げは継承前の2倍に。
茨城発:民俗学者として大学で教鞭をとる野口憲一さん。実家の野口農園で作るレンコンに自信を持ち、1本5000円で発売。今では国内外に顧客を持ち、売り上げは1億円を超える。
カンボジア発:内戦直後、国際協力で現地に渡った倉田浩伸さん。かつて世界一と評された胡椒が内戦で絶滅寸前と知り、自ら畑を買い取って復活に尽力。お土産として活路を見出す。
京都発:年間1500人の外国人旅行者が参加する茶園ツーリズムを生み出した京都おぶぶ茶苑の松本靖治さん。茶畑オーナー制度などユニークなアイデアで、茶業界に新風を吹き込む。
新潟発:フランスで天才と称されたナチュラルワインの醸造家・ジャンマルク・ブリニョさん。佐渡島に移住し、これまでにない発想で新たなワイン造りに挑む。
『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』(4刷)に続く、新たな挑戦者たちの物語です。
この本が、農業に携わる人たちのヒントや刺激になってほしい!
登場するネクストファーマーズを紹介!
静岡発:産地を循環する「やさいバス」で農産物の新しい物流を作り、本当の意味の地産地消と地域経済の活性化に挑むエムスクエアラボの加藤百合子さん。
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宮崎発:ソ連の火星探査計画から生まれた、家畜の排せつ物を食べ、飼料にも肥料にもなるスーパーイエバエ。これを使って食糧危機に立ち向かうムスカの串間充崇さん。
埼玉発:大学を中退して、食用バラ農家に就いたローズラボの田中綾華さん。バラを使った食品や化粧品を次々と開発し、就農から3年目にして売り上げが1億円を突破した。
富山発:ネパールで仏画師をしていたダルマ・ラマさん。日本人女性との結婚を機に来日し、縁あって富山の小松菜農家を継承。日本と母国をつなぐビジネスも始め、売り上げは継承前の2倍に。
茨城発:民俗学者として大学で教鞭をとる野口憲一さん。実家の野口農園で作るレンコンに自信を持ち、1本5000円で発売。今では国内外に顧客を持ち、売り上げは1億円を超える。
カンボジア発:内戦直後、国際協力で現地に渡った倉田浩伸さん。かつて世界一と評された胡椒が内戦で絶滅寸前と知り、自ら畑を買い取って復活に尽力。お土産として活路を見出す。
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新潟発:フランスで天才と称されたナチュラルワインの醸造家・ジャンマルク・ブリニョさん。佐渡島に移住し、これまでにない発想で新たなワイン造りに挑む。
『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』(4刷)に続く、新たな挑戦者たちの物語です。
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2021/10/20
- 寸法10.9 x 1.4 x 17.3 cm
- ISBN-104166613367
- ISBN-13978-4166613366
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2021/10/20)
- 発売日 : 2021/10/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 288ページ
- ISBN-10 : 4166613367
- ISBN-13 : 978-4166613366
- 寸法 : 10.9 x 1.4 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 281,524位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年10月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年5月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本当に興味深く読ませていただきました。様々な作物にまつわる苦労と成功の話に感動しました。未来と希望も感じられました。とても勉強になりました。
2021年12月4日に日本でレビュー済み
「農業」というテーマよりも、稀人ハンターとして知られる著者の文章に惹かれて購入。
農業に限らず、今後どの産業においても「越境」がキーワードになるのではないか。
本書に登場する、年齢・性別・国境を超えて新しい形の農業を生業とする挑戦者たちの姿を見ていると、いわゆる「人生のターニングポイント」について深く考えさせられる。彼ら彼女らは自分の頭で考え、自らの人生を変える決断を次々としているように思えるからだ。
振り返って自分は…と思うとやや寂しい気持ちになるが、一方で本書は、自分は自分の持ち場でやれることをやらなければと奮い立たせてくれる本でもある。
農業に限らず、今後どの産業においても「越境」がキーワードになるのではないか。
本書に登場する、年齢・性別・国境を超えて新しい形の農業を生業とする挑戦者たちの姿を見ていると、いわゆる「人生のターニングポイント」について深く考えさせられる。彼ら彼女らは自分の頭で考え、自らの人生を変える決断を次々としているように思えるからだ。
振り返って自分は…と思うとやや寂しい気持ちになるが、一方で本書は、自分は自分の持ち場でやれることをやらなければと奮い立たせてくれる本でもある。
2021年10月31日に日本でレビュー済み
私は、野菜の販売に携わる仕事をしています。
農業をされている方のお話を聞くとほとんどの方が悩みを抱えています。
そして、重労働であったり、生産性もあまり良くありません。
しかし、やりたい、興味がある人が男女問わず大勢いるのだからもっと浸透していき、農業という職業が更に発展したら良いと思っていました。
よって、この本を読んでこんなやり方で農業の発展に貢献した方がいるんだととても勉強になりました。
その行動力、知恵、エネルギー、私に足りないものだと痛感しました。
人も巻き込み、人に喜ばれることをしたいと、私にもできることがあるんではないのかと勝手ながらこの本を読んで考えてしまいました。
10人ほどの人のことが書かれていたのでもっと1人1人のことを知りたいと思いました。どうやってこれを作ったのかという過程や作者の感情なども書いてあったら面白いと思ったのでまた、1人1人本を出して欲しいです。
農業をされている方のお話を聞くとほとんどの方が悩みを抱えています。
そして、重労働であったり、生産性もあまり良くありません。
しかし、やりたい、興味がある人が男女問わず大勢いるのだからもっと浸透していき、農業という職業が更に発展したら良いと思っていました。
よって、この本を読んでこんなやり方で農業の発展に貢献した方がいるんだととても勉強になりました。
その行動力、知恵、エネルギー、私に足りないものだと痛感しました。
人も巻き込み、人に喜ばれることをしたいと、私にもできることがあるんではないのかと勝手ながらこの本を読んで考えてしまいました。
10人ほどの人のことが書かれていたのでもっと1人1人のことを知りたいと思いました。どうやってこれを作ったのかという過程や作者の感情なども書いてあったら面白いと思ったのでまた、1人1人本を出して欲しいです。
2022年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
農業の起業と言う観点で非常に参考になったが、登場人物の生き方そのものも面白かったです。