大久保利通の実子で子供の頃に海外に出され、父の死後は伊藤博文の薫陶を得て、
元勲の二世の中では英語のできる有能な人物として知られ、当然に親英米
という志向を持ち、県知事の時代の若い頃は意外なほど市井の庶民に寄り添った
施策をきちんと進めているので、その辺も英米仕込みの能吏という肖像を
見出すことができます。
同じ世代の政党政治家も、原敬は実力の点で親英米しかないと考え、浜口雄幸は
英米を中心とした国際協調という考えをし、当時の親英米は牧野と昭和天皇くらい
になりますが、原も浜口もも当時の風潮の中で凶弾に倒れます。
牧野自身は政党政治のお粗末さを嫌って距離を置き、やや超然とした立場で
昭和天皇の側近として、宮相や内相として支えますが、それゆえに陸軍や右翼
からは「君側の奸」の中心と看做され、二二六以外にも数度の暗殺のターゲット
になっています。
元老制度が西園寺一人になって機能不全になり、当時の制度下での将来を考えると、
牧野の、重臣を元老に組み入れる道しかなかったように考えられますが、
西園寺は少し公家らしいズルいところがあって、自身は安全な興津や京都に
離れて暮らし、重要な問題にも明白な回答を示さず、それでいて元老を増やす
案に対しては消極的な態度を示してことの進行を妨げてしまう。
牧野は二世世代の中で孤軍奮闘しつつも、超然とした立場の三世世代である近衛や
木戸幸一に託すよりなく、彼らの能力不足が結局は日本の破滅をもたらします。
ただ、牧野が米国大使に天皇の立場を語ったことが、その後の占領軍の政策に
大きな影響を与えたようで、英米派というスタンスは、娘婿の吉田茂に引き継がれて
戦後日本の再建には大きな影響を残したことになります。
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