社会保障-再分配政策-は分かりやすいからこそ、政争の具になりやすい、と文中でも述べているが、この社会保障の諸問題を政治学と経済学のミックスした観点から論じていく、深い思索と鋭い視点に満ちた秀作。
この本が出色なのは、再分配政策をめぐる政策決定過程の普遍的ルールを、冷徹な人間観に基づいて分析していること、が一点目。例えば、「問題設定は既に価値判断を内包していて議論は予定されたところに落ち着く」「政策は力が作るのであって正しさが作るのではない」「時代の常識とも言うべきものが経済が不活性のときに勃興し、政治行動を一定の方向に導く」といった指摘だ。どれもロジカルに提示された仮説であり、説得力がある。
そして、社会保障の「常識の非常識」とも言うべき点を丹念に説き起こしているのが二点目。
危機喚起型の制度改革が有効に働いていない点、国民負担率を論じることの無意味さ、人口構造の変化(高齢化)は1%の経済成長でまかなえる、医療費増は高齢化のためではなく、医療の高密度化と範囲拡大の方が本質的な問題、等々随所に切れ味鋭い指摘を実証的に行い、社会保障の世界での「常識」を新しい視点から転覆させるものだ。
このような指摘を通じて、やはり社会保障(再分配政策)は「本来経済政策の一部門であった」ことを明快に示すし、「時代の常識」に左右される難しい領域であることが改めて焙り出される。厚生労働省はじめ政策担当者が、「自分の見たいものしか見ない」状況に陥らないためにも、味読し、本質の議論を行うための視点を得ていくための格好の素材である。知的興奮に満ちた一冊と言える。
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再分配政策の政治経済学〈1〉日本の社会保障と医療 単行本 – 2005/8/29
権丈 善一
(著)
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- 本の長さ394ページ
- 言語日本語
- 出版社慶應義塾大学出版会
- 発売日2005/8/29
- ISBN-104766411676
- ISBN-13978-4766411676
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登録情報
- 出版社 : 慶應義塾大学出版会; 第2版 (2005/8/29)
- 発売日 : 2005/8/29
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 394ページ
- ISBN-10 : 4766411676
- ISBN-13 : 978-4766411676
- Amazon 売れ筋ランキング: - 579,518位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2007年3月25日に日本でレビュー済み
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2005年9月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あまりの面白さに初版本も第2版も買ってしまいました。昨今の医療に関する問題について冷静な目を持てる本です。これを丁寧に読んでいけば、いかに不安を駆り立てるようなデータや論調に踊らされているか、目が覚めます。社会保障や医療は私たちの生活に重要な問題であるがゆえ、不安にさせられるようなデータに対しては「本当?」と疑ってみることが大事だと実感させられます。自分で調べるのは大変だし、方向性も間違いやすいので(経済学で言えばコストがかかるので)、是非このような研究書を選んで読んで、誰かにとって有利で、薄っぺらい情報に踊らされないように、物事に対して冷静な目を養うことが必要ではないかと思います。
2007年9月25日に日本でレビュー済み
タイトルに「'T」が加わった本書が、[第2版]である。
2005年7月12日に記された「第2版への序文」に本書出版の経緯が程よく記されている。この「第2版への序文」を読むだけの為に[第1版]に追加して、[第2版]を購入する価値があると言うのは、褒め過ぎだろうか。私には、その価値があった。
本書で権丈は、医療経済政策学上の幾つかのテーマ・特に俗論が巷に流布しているものに対し、権丈オリジナルの政治経済学的アプローチを加えている。
本書には計量経済学を学んでいない、医療関係者にとって難解な部分もあるが、それを超えた価値がある。
[第2版]より付加された本書の帯(俗称腰巻)に記された、『政策は、所詮、力が作るものであって 正しさが作るのではない』現実を直視し、現代の医療経済・政策学を考える上で、是非普及して欲しい一冊です。
2005年7月12日に記された「第2版への序文」に本書出版の経緯が程よく記されている。この「第2版への序文」を読むだけの為に[第1版]に追加して、[第2版]を購入する価値があると言うのは、褒め過ぎだろうか。私には、その価値があった。
本書で権丈は、医療経済政策学上の幾つかのテーマ・特に俗論が巷に流布しているものに対し、権丈オリジナルの政治経済学的アプローチを加えている。
本書には計量経済学を学んでいない、医療関係者にとって難解な部分もあるが、それを超えた価値がある。
[第2版]より付加された本書の帯(俗称腰巻)に記された、『政策は、所詮、力が作るものであって 正しさが作るのではない』現実を直視し、現代の医療経済・政策学を考える上で、是非普及して欲しい一冊です。
2007年1月5日に日本でレビュー済み
医療のみならず、社会保障のあり方に興味がある方に激しくお勧めの1冊。
まず、俗説に阿らない姿勢が目を曳きます。例えば、少子高齢化を一概に危機と決め付ける風潮に疑義を呈している第4章。マスコミでもよく取り上げられる生産年齢人口/高年齢人口比よりも総人口/就業者数比の方がより意味のある数字ではないかとし、年少人口比率減により後者が戦後一貫して安定していたことが意図的に無視されていたことを暴きだします。また、経済学的には不合理な社会保障政策が選択されがちな理由については、利益集団を介するモデルを使い、政治家が有権者の合理的無知につけこみ政策に関する知識を得るコストを意図的に吊り上げていることを説得的に論じています(第1章)。
以上の知見を具体的問題へ応用した例として特に優れていると思ったのが第7章で論じられている’90前後の「看護師不足問題」です。通り一遍の教科書的な経済学的アプローチでは真因探れずとしたうえで、日本の看護サービスが介護サービスと代替性が高い実態に着目、介護施設・職員の不足とバブル期の低金利に刺激された病院側の増床合戦が生んだ現象と喝破します。そのうえで、医師・利用者へ各々異なるサービスを提供している看護師にこそ病院評価力が存在し、利用者がこの力を活用することで医師と利用者との間にある「情報の非対称性」を打破できるのではないか、という提言に説得力を感じました。
ご紹介できなかった他の章もいずれも読み応えのあるものばかりです。シリーズ化されている「再分配政策の政治経済学2」「同3」も引き続き読んでいこうと思っています。
まず、俗説に阿らない姿勢が目を曳きます。例えば、少子高齢化を一概に危機と決め付ける風潮に疑義を呈している第4章。マスコミでもよく取り上げられる生産年齢人口/高年齢人口比よりも総人口/就業者数比の方がより意味のある数字ではないかとし、年少人口比率減により後者が戦後一貫して安定していたことが意図的に無視されていたことを暴きだします。また、経済学的には不合理な社会保障政策が選択されがちな理由については、利益集団を介するモデルを使い、政治家が有権者の合理的無知につけこみ政策に関する知識を得るコストを意図的に吊り上げていることを説得的に論じています(第1章)。
以上の知見を具体的問題へ応用した例として特に優れていると思ったのが第7章で論じられている’90前後の「看護師不足問題」です。通り一遍の教科書的な経済学的アプローチでは真因探れずとしたうえで、日本の看護サービスが介護サービスと代替性が高い実態に着目、介護施設・職員の不足とバブル期の低金利に刺激された病院側の増床合戦が生んだ現象と喝破します。そのうえで、医師・利用者へ各々異なるサービスを提供している看護師にこそ病院評価力が存在し、利用者がこの力を活用することで医師と利用者との間にある「情報の非対称性」を打破できるのではないか、という提言に説得力を感じました。
ご紹介できなかった他の章もいずれも読み応えのあるものばかりです。シリーズ化されている「再分配政策の政治経済学2」「同3」も引き続き読んでいこうと思っています。
2007年3月3日に日本でレビュー済み
著者の、冷静で一貫性のある科学する姿勢が素晴らしい。社会保障に関する議論は、ともすると「‥であるべき」論との混同をベテランの論者にも起こし易いが、著者にはそういうところがないようである。
医療は、非常に今日的な問題であり、多くの既成事実や既成勢力が存在すると同時に、「このままでよい」と考える人は非常に少ない分野である。初学者にはなかなか手強い本書ではあるが、是非とも多くの人に読んでもらいたい。
医療は、非常に今日的な問題であり、多くの既成事実や既成勢力が存在すると同時に、「このままでよい」と考える人は非常に少ない分野である。初学者にはなかなか手強い本書ではあるが、是非とも多くの人に読んでもらいたい。
2006年10月8日に日本でレビュー済み
非常に優れた内容の本書であるが、社会保障を最も必要とする人達の目になかなか触れないのが残念である。